「農民」記事データベース20090622-881-09

小規模農民の権利を守ろう

ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域
第2回 小農民権利研修会

 ビア・カンペシーナ(LVC)東南・東アジア地域は5月26〜29日、タイのチャチュンサオ県でAOP(貧困者連合)・NPF(タイ北部農民連合)主催による第2回小農民権利研修会を開き、地元タイをはじめ、インドネシア、東ティモール、韓国、日本から7つの農民組織が参加しました。日本から参加した農民連・国際部員の武田伸也さんのリポートです。


農民連国際部員
武田伸也さんのリポート

 運動強化の技量を向上させる研修会

 小農民の権利は、ヘンリー・サラギさんが代表のインドネシア農民組合連盟(SPI)が2000年に行った小農民権利ワークショップを契機に、議論されるようになりました。02年には東南・東アジア地域の「小農民権利宣言」が作成され、08年6月のビア・カンペシーナ国際小農民権利総会(ジャカルタ)でLVC全体の「宣言」として採択され、同年10月のアフリカ・モザンビークLVC国際総会で、この「宣言」を国連の国際条約として確立していくことを決めました。

 今回の小農民権利研修会は、こうした経過を踏まえて、さらに運動を強化し、どのように小農民の権利が侵害されているかを監視するスキル(技量)を学び向上させるために開かれました。

研修会に参加したLVCの仲間たちと(前列中央が武田さん)

 日本の農地法改悪はもったいない!

 初日の26日には、各国から小農民の権利侵害の実例が報告されました。日本からは「農地法が改悪されて、農民の権利が侵されようとしている」ことを紹介すると、「いいものがあるのにもったいない」などの意見や、「反対運動の中で何人逮捕されたのか?」との質問には、ちょっと戸惑ってしまいました。

 27日には、実際にタイの農民が経験した「突然現れた国家警察によって、なんの理由もなく農地を収奪された」という事例を使い、全員でリポートを作成しました。

 28日には、2つのグループに分かれ、(1)借金で土地を奪われた村、(2)発電所建設の理由で土地を奪われた農民というテーマで、タイの農民がいま直面している権利侵害の実態をリポートにまとめました。

 私が訪れた村のサムリット・ポクラさんは、商人から借金した後、不透明な負債額と利子を支払い続け、最終的に農地を奪われた話をしてくれました。また同じ村の女性は「企業が私の畑をユーカリ畑で取り囲み、立ち退きするよう圧力をかけられているが、どうすればよいのか」と、目に涙を浮かべながら訴えてきました。

 最終日の29日には、バンコクにあるタイ国家人権委員会を訪れ、小農民の権利意識の向上と政府に「宣言」の支持を促すよう、委員長に要請して、全研修プログラムを終えました。

各国から小農民の権利がいかに侵害されているか報告されました

 「小農民権利宣言」 国際条約の確立へ

 今回の研修では、企業の横暴に苦しめられているタイの農民の涙ながらの訴えを直接聞き、小農民の権利を保護する国際条約を確立することがいかに重要かを学びました。また、日本の農地法がどれだけ農地と農民を守ってきたかもはっきりとわかり、反戦と民主化のたたかいのなかから生まれた農地法を「小農民の権利を守ってきた実例」として海外の仲間にもどんどん発信していく必要があると感じました。


小農民権利宣言とは

 世界人口の約半数は小農民。技術的に発展した国でさえ、人々は小農民が生産した食糧を口にする。小規模農業はただの経済活動ではなく、人々の生活環境そのもの。世界の安心・安全は、小農民と持続可能な農業の行方にかかっている。人間の命を守るには、小農民権利を「尊重・保護・実行」することが必須。実際、いま起こっている小農民への権利侵害は、人類の生存をより危険にさらしている。(前文の一部から)

 また「宣言」では、土地・領地への権利や種子及び伝統的な耕作知識・農法への権利など、11の小農民基本権利を掲げています。

(新聞「農民」2009.6.22付)
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2009年6月

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