「農民」記事データベース20100524-925-02

後継者育成はますます重要

農業アカデミーぜひ存続を

神奈川食農健が県に要請

関連/鳩山政権の事業仕分けで国の農業者大学校を「廃止」に


 神奈川県は4月1日に、試験研究機関である農業技術センター、畜産技術センターと、農業大学校にあたる「かながわ農業アカデミー」(アカデミー)とを統合しました。

 「食糧・農業と国民の健康を守る神奈川会議」(神奈川食農健、永田講平議長)は4月26日、県庁を訪れ、アカデミーの統合問題で要請しました。

 神奈川食農健の参加者は「農業後継者育成機関であるアカデミーと試験研究機関とは、その設置目的がまったく異なり、統合によって双方の機能が十分に発揮できなくなるのではないか。農業後継者の育成というアカデミーの機能が後退するのではないか」など県民の不安の声を紹介しました。

 県環境農政局は「具体的な機能の統合はまだ白紙の状態」と説明。農業振興の取り組みについては、都市農業の担い手として農家出身以外からの新規参入者の育成・定着を図る事業や、湘南ゴールド(かんきつ)など神奈川産農産物のブランド化を進め、地産地消の推進、流通・販売の拡大を推進する事業などを紹介しました。

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「農業アカデミーの存続を」と要請する神奈川食農健のメンバー。こちら向き右から2人目が北出顧問、同4人目が永田議長

 神奈川食農健の参加者は「こうした事業の推進や農業振興のためにもアカデミーの役割はますます重要。機能を後退させることなくさらに充実・発展させてほしい」と求めました。

 県は「みなさんの強い思いを受け止めさせていただく。今後、検討していくなかで、みなさんの意見を反映させたい」と答えました。今後、節目節目に意見交換を継続することを確認しました。


入学者が増加充実こそ必要

北出俊昭さん(元明治大学農学部教授・神奈川食農健顧問)

 大企業本位の輸出に依存した経済政策を見直し、くらし優先、農業重視の産業構造が求められています。そういう点からも、農業の振興のために、農業後継者を育てることは大事な課題です。

 こうした観点から、講義や演習で農業の知識や科学的理論を学習しながら、実際にほ場で実習を積み重ねることで、より高い技術を身につけることができる、国の農業者大学校と都道府県の農業大学校は重要な役割を果たしています。

 それにもかかわらず、現在、その廃止や統合による機能の縮小が進められようとしていますが、ここ数年、入学者が増加し、農業を志す人が増えており、その充実こそが求められています。農業は、すぐに結果が出るものではありません。効率化になじまない要素があるのです。そのため、国や都道府県の果たす役割はますます重要になっています。

栽培の面白さ学び身についた

中田陽子さん(かながわ農業アカデミー1996年度卒業生・藤沢市)

 最初は、親のもとで就農していましたが、“もっと農業の基礎を学んでみたい”と、1年間の研究科課程に通いました。「なぜこういう肥料をまくのか」など、畑でも机の上でも基本の基本を教えてくれて、家では学べないことが学べました。

 野菜コースで、栽培のおもしろさを身につけることができ、年齢や栽培方法への考え方が違う人たちと意見を交わしながら、一緒に学ぶことで大きな刺激になりました。

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トマト、ナスなど多品目を栽培する中田陽子さん。長男の匠(たくみ)君(小学2年)と自宅の畑の前で

 これから本格的に農業をやろうという人が、いざ勉強したいときに勉強できる―。これが農業アカデミーのいいところです。

 神奈川の都市農業を発展させるためにも、農業アカデミーを、さらに充実させてほしい。

(新聞「農民」2010.5.24付)
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2010年5月

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