「農民」記事データベース20101108-948-02

COP10国際フォーラム

家族農業は生物多様性を守り
世界を養うことができる

“多国籍企業による生物資源支配にストップを”


 生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)開催中の名古屋市で10月22日、国際フォーラム「家族農業は生物多様性を守り、世界を養うことができる」が開かれ、約110人が参加しました。主催は、国際的農民組織ビア・カンペシーナ(LVC)、農民連、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)。

 農民連の真嶋良孝副会長が主催者あいさつ。政府が推進する貿易自由化は「農業と生物多様性を破壊する」と批判し、「このフォーラムを契機に、多国籍企業による無法な挑戦を阻止しよう」と訴えました。

 海外ゲストを代表してあいさつしたのは、LVC国際調整委員のヘンリー・サラギさん。「国連、世界銀行、国際通貨基金などが飢餓や気候変動、生物の絶滅などに対し有効な解決策を示していない」と述べ、「持続可能な家族農業こそ、これらの危機を解決できる」と訴え、食糧主権の確立を呼びかけました。

画像
各国の農業の現状や取り組みが報告された国際フォーラム

 午前中の第1セッションのテーマは「世界と日本で何が起こっているか」。農民連の齋藤敏之常任委員がポジションペーパー「食糧主権の確立が生物多様性を守る。多国籍企業による生物資源の支配にストップを」を紹介し、COP10に臨む農民連の立場を表明しました。

 また、フランスの農民で、LVC生物多様性委員会ヨーロッパ代表のギ・カステールさんは、遺伝子組み換え生物(GMO)の実験場に反対する活動を通じて、フランス政府がモンサント社のGM品種の開発計画を禁止した成果を語りました。そして、企業がGM品種の開発で遺伝子に特許をかけ、農民の種子への権利を制限している実態を告発しました。

農業と生物多様性守るには
食糧主権実現こそ大事

 農民連食品分析センターの八田純人さんは、自生しているGMナタネ汚染の状況を報告。MOP5(カルタヘナ議定書第5回締約国会議)で、GMOにより損害が生じた場合の賠償ルールが作られたことを述べ、「農水省が『問題ない』とするなかで、汚染に対する責任が認められたのは、分析センターの大きな成果。今後は国内法の改正が大きな問題になる」と指摘しました。

 韓国女性農民会(KWPA)のシン・ジオンさんは、政府が強行する自然・生態系破壊の大型開発「四大河川整備事業」を批判し、「多くの生物を守り、農業と環境を残したい」と述べました。

 午後の第2セッションは「世界と日本で私たちは何をしてきたか、何をしようとしているのか」。カナダで40品目の野菜を栽培し、牛を肥育するコリーン・ロスさんは、「有機農業や産直・直売を実践し、生物多様性を生活のなかに位置づけることが必要」と強調。そして、カナダが北米自由貿易協定(NAFTA)に加盟し、農民の所得が下がり借金が増えている実情を報告。「農民は栄養価の高い、安全な食糧を生産するだけでなく、地域で育てた食糧への権利を守るためにたたかわなくてはならない」と訴えました。

画像
東ティモールで有機農業を営むエゴ・レモスさん―平和・平等・農民の尊厳を高らかに歌いあげました(10月22日、国際フォーラムの昼休みに)

 兵庫県豊岡市の米農家、田中定さんは除草剤、化学肥料、殺虫剤を使わない「コウノトリ育(はぐく)む農法」で田んぼに生き物が戻ってきた取り組みを報告。山形県置賜(おきたま)農民連青年部の渡沢寿さんは、消費者や地域の子どもたちと一緒に田んぼを観察する「田んぼの生きもの調査」を紹介。長野県上伊那農民組合産直センターの竹上一彦さんは、特産品になった白毛餅の保存の大切さを報告。最後に、KWPAのシンさんが在来種子の90%以上を多国籍企業に支配されている韓国の現状を告発し、種子を守る取り組みが始まっていることを報告しました。

 愛知県アツミ産直センターの職員、小見田郁弥(ふみや)さん(24)は「農業や生物多様性を守るために、食糧主権が大事だと思いました。海外代表の産直や価格設定の話は、とても参考になりました。地域の農産物を消費者に自信をもってすすめたい」と話していました。


COP10に参加したビア・カンペシーナ(LVC)のメンバー(敬称略)

 ヘンリー・サラギ(LVC国際調整委員、インドネシア農民組合SPI代表)
 テジョ・プラモノ(LVCスタッフ、インドネシア)
 ギ・カステール(LVC生物多様性委員会ヨーロッパ代表、フランス農場種子ネットワーク議長、農民)
 オードリー・ムイセ(通訳、フランス)
 ミリアム・ボイエ(通訳・学生、メキシコ)
 コリーン・ロス(カナダ全国農民組合全国委員、LVC生物多様性委員会メンバー、農民)
 キム・ヘスク(LVCスタッフ、韓国)
 シン・ジオン(韓国女性農民会=KWPA=種子保全運動事務部長)
 カン・ジンイル(通訳、韓国)
 エゴ・レモス(持続可能な農業推進ネットワーク=HASATIL=メンバー、農民、ミュージシャン)
 マルシアーノ・ダ・シルバ(ブラジル小農民運動スタッフ)

(新聞「農民」2010.11.8付)
ライン

2010年11月

HOME WTO トピックス&特集 産直・畜産・加工品 農業技術研究
リンク BBS 農民連紹介 新聞「農民」 農とパソコン

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒171-0022
東京都豊島区南池袋2-23-2
池袋パークサイドビル4階
TEL (03)3590-6759

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2010, 農民運動全国連合会