「農民」記事データベース990322-399-06

[解説]

アメリカの意のままの「政府統一見解」

輸入義務化

 「ミニマム・アクセスが輸入義務だと、どこに書いてあるのか」――中林議員の質問に、外務省が大あわてで、ぶ厚い協定書をめくった――。しかし、WTO協定には、ミニマム・アクセスについての具体的な条文はないのだから、どこを探しても出てくるはずがありません。
 WTO農業協定に「ミニマム・アクセス」規定が出てくるのは、米の関税化特例措置を定めた「附属書 五」。「最小限度のアクセス機会が、当該加盟国の譲許表…において明記されているとおり…」となっているだけ。
 実際、日本の「譲許表」には米のミニマム・アクセス量を九五年に三十七万九千トン、二〇〇〇年に七十五万八千トンと書いています。
 国際経済法の権威である石黒一憲・東大教授によると「アクセス」(接近)というあいまいな英語をWTO協定に盛り込ませたのはアメリカ。日本の外務省も翻訳に困り、「アクセス」という英語をそのまま使っています。
 銘柄にも味にもきわめて無頓着に「同じ米であれば、安いアメリカ米が売れるに違いない」という独断にもとづいて「アクセス機会を設定させれば、日本は必ず米を輸入するはずだ。もし輸入されないとすれば、市場が閉鎖的なためだ」と、圧力をかけるためです。
 “アメリカ・WTOタブー”の政府(羽田政権)は、九四年五月二十七日に、ミニマム・アクセスは「輸入を行うべきもの」、つまり“義務”だという「政府統一見解」を出しました。アメリカの意のままです。
 実は、この問題を追及したのは、当時野党であった自民党農林族の大物・保利耕輔議員。「国産米が『過剰』であっても、輸入が義務づけられるのはバカげたことだ」と。
 「野党」のときには正論、「与党」になれば、バカげた議論に平気でしがみつく――やっぱり、自民党をも一度「野党」に。

(新聞「農民」1999.3.22付)
ライン

1999年3月

HOME WTO トピックス&特集 産直・畜産・加工品 農業技術研究
リンク BBS 農民連紹介 新聞「農民」 農とパソコン

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒171-0022
東京都豊島区南池袋2-23-2
池袋パークサイドビル4階
TEL (03)3590-6759

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-1999, 農民運動全国連合会