「農民」記事データベース990405-400-02

[2面]

米自由化 百害あって一利なし!

明らかになった政府・自民党の3つの大ウソ


 政府・自民党は、農民にも国民にも何の相談もなく米の自由化(関税化)を急ぐ理由として、次の三つをあげていました。
 (1)早く自由化すれば、義務的輸入(ミニマム・アクセス)の伸び率をおさえることができる
 (2)高い関税率を設定しても、各国は文句を言えない
 (3)肩身の狭い「特別扱い」を自分でやめれば、ヨーロッパ連合(EU)と“共闘”して、WTO(世界貿易機関)の交渉を有利にできる
 しかし、国会での議論や世界の動向によって、この三つの言い分は全部くずれてしまいました。

大ウソ その1

ミニマム・アクセスは「輸入義務」ではない!

 「国民が食べなくても、国内でどんなに米が余っても、国際的義務だから、外米を輸入しなければならない」。自民党政府は、こんなデタラメを言って、史上最大の減反を押しつけ、さらに、ことしから米の輸入自由化に乗り出す口実にしています。

協定に「輸入義務」とは書いていない

各国は全量輸入していない
 しかし、国会での日本共産党議員の追及で、これが大ウソであることがばれてしまいました(三月九日、衆議院農林水産委員会で、中林よし子議員)。ハイライトを再現すると――。

 中林議員 韓国も、日本と同じように米の輸入を国家が管理しているが、ミニマム・アクセス米を全量輸入していない。これはどういうことか?
 堤食糧庁長官 (大あわてで)知らなかった……。
 中林議員 政府はミニマム・アクセスが「義務輸入」だと言ってきたが、それはWTO協定のどこに書いてあるのか。
 外務省大島経済局長 ……(ぶ厚い協定書をめくるが、答えられず)
 堤長官 WTO協定にはないが、「義務だ」というのが日本政府の見解だ。
 中林議員 ミニマム・アクセスは「輸入枠」の設定だけ。日本政府が勝手に解釈して「義務だ」と言っているだけではないか。政府がやろうと思えばミニマム・アクセスは減らせるではないか。

それでも「義務」と言いはる自民党

 この質問は「自民党農林幹部の中にも、ミニマム・アクセスの削減を模索する意見もある」(日本農業新聞)と報じられるほど大きな反響を呼びました。  しかし、政府・自民党の結論は「やっぱり義務だ」――というもの。
 そんなに、外米を輸入したいのでしょうか! そんなに減反を押しつけたいのでしょうか!

大ウソ その2

異議続出「高関税で米を守れる」のか?

 「高い関税率を設定しても、各国は文句を言えない」――それどころか、アメリカがしつこく文句をつけ、ヨーロッパ連合(EU)やオーストラリア、ウルグアイ、アルゼンチンが、WTOに「こんな高い関税は認められない」と異議を出しました。
 あわててEUに飛んでいった農水省最高幹部に対しても、「日本が関税化するのは勝手だが、関税の計算方法は了承できない」と、つれない返事。
 アメリカは、二〜三年後には、関税を半分にすべきだと圧力をかけています。
 自由化(関税化)すれば、関税率だけが日本の米を守る頼みの綱。
 ところが「来年までは関税率を守るが、その後は分からない」(中川農水大臣)と答弁する頼りなさ。
 こんな見通しのない弱腰外交で、本当に関税率を守ることができるのか、不安はつのるばかりではありませんか。

大ウソ その3

EUと“共闘”どころか交渉はいっそう不利に

 「特別扱いを受けたままでは肩身が狭い。関税化して対等の立場に立って、EUと“共闘”してWTOの次期交渉を有利に進めることができる」――これが、農水省・外務省の言い分でした。
 ところが、事態はまったく逆。「異議申し立てがあるはずがない」などと、世界に通用しない大ボラを吹いて、EUなどの反発を買い、“共闘”どころか、孤立する状態をつくったのは政府・自民党です。
 しかも、異議申し立ての紛争処理手続きには一年近くかかり、このまま十一月から始まる次期交渉にもつれこむことになりかねません。
 関税引き下げの圧力や、完全自由化要求などの「新たなコメ包囲網」(読売)――。「早期関税化」などというバカげたことをやらなければ、こんなことにならなかったはず。

改定の足がかり投げ捨てる関税化は撤回せよ

 「コメの特例措置」は、アメリカが押しつけた「例外なき関税化」に歯止めをかけ、食料安全保障や環境保全など農業の多面的機能の尊重を認めさせた唯一の条項。次の交渉で、WTO加盟国の三分の二以上を占める輸入国や発展途上国と一緒に、不平等なWTO農業協定を改定させる足がかりです。
 これを投げ捨てるのは、「最悪の選択」「百害あって一利なし」です。いったい、これで、どういう交渉をやろうというのでしょうか。政府・自民党の責任は二重三重に重大です。
 しかし、国会を通ったのは国内法だけで、国際条約(WTOに対する日本の約束)の修正は、まだ国会でも、世界でも承認されていません。
 自民党や自由党、公明党などの足元をゆるがす大運動で、関税化を撤回させようではありませんか。


[コラム]

大商社・大資本が続々と「本格的な米輸入」を準備

 キリンビールの子会社がアメリカ・アーカンソー州で「有機米」の契約栽培を開始し、年内に五千トン輸入。
 大手商社・日商岩井は中国で「きらら」と「ひとめぼれ」を作付させ、いつでも輸入オーケー。
 大手商社・トーメンも、来年から中国で「あきたこまち」の開発輸入を計画。
 大資本の「米輸入ビジネス」が本格始動しています。
 「低価格志向を強める外食産業などが、昨年ごろから輸入米に目を向けはじめた」(読売)。
 三月に試食したアメリカ米のおにぎりは、塩と炊飯油のせいか、コンビニのおにぎりと、ほとんど区別がつかない味。これでは、ブレンドされてもごまかされます!
 商社や大資本の思惑は、当分は、すぐにも安売りできる“談合輸入米”“自由化演習米”(SBS米)を使うこと。さらに、アメリカの圧力で、関税が「現在の二分の一から三分の一に下がれば、業務用需要を軸に一気に(輸入米の主食用流通が)ふくらむ」(「日経」)という計算です。

予行演習は始まっている 自由化米一俵一万一千円

 自由化の予行演習はすでに始まっています。大商社と大手米卸が、示しあわせて主食用に輸入するSBS米(売買同時入札米)は、昨年は十二万トンにもなりました。“せいぜい五〜六万トン”と言っていた政府の公約違反です。
 しかも、最高一キロ二百九十二円のはずだった“関税”は、昨年一番低いとき(五月)で八十七円。このためアメリカ産あきたこまち・コシヒカリは十キロ一九五〇円、一俵一万一七〇〇円で米卸に売り渡されました。
 消費者には「国産一〇〇%コシヒカリ」で売られていたのです。これが、自主流通米の価格回復の足を引っ張ったことも明らかです。

(新聞「農民」1999.4.5付)
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