「農民」記事データベース990628-410-01

遺伝子組み換えトウモロコシ(Btコーン)

ついに栽培凍結、農水省が発表

内外世論の厳しい追及に重い腰

花粉からチョウの幼虫が大量死


 害虫に強い遺伝子組み換えトウモロコシとして日本にも大量に輸入され、家畜の飼料やビール、食用油など食品加工原料に使われている「Btコーン」。「この花粉をチョウの幼虫に食べさせると、多数が死亡」という『ネイチャー』(英国の科学誌)に掲載された米国コーネル大学の研究は、いま内外に大きな波紋と衝撃を与えています。

 欧州連合(EU)は、この研究が発表されるとただちにパイオニア・ハイブリッド・インターナショナル社が申請していたBtコーンの販売認可を凍結。オーストリア政府もモンサント社のBtコーンの栽培禁止を発表するなどヨーロッパでは、Btコーン混入の米国産トウモロコシの輸入が前年の六分の一に激減しています。

 一方、日本国内では、五月末に東京で開いた「遺伝子組み換え食品いらない!世界同時行動デー」の代表が農水省農林水産技術会議の三輪睿太郎事務局長にたいし、「生態系に影響を与えるBtコーンの安全性確認を見直せ」「遺伝子組み換えイネの実用化をめざす研究の中止」を申し入れていました。
 こうした動きのなかで農水省は六月十五日、国内での栽培を目的とした害虫抵抗性トウモロコシについては、新たな安全基準を作るまで栽培を凍結すると、発表しました。

「安全だ」と固執する農水省

 これまでBtコーンの生態系への影響を認めようとしなかった農水省も重い腰を上げ、安全性確認の見直しをせざるをえなくなったわけです。
 しかし今回の発表でも、「本実験結果(米コーネル大)をもって直ちに、組み換えトウモロコシが自然の昆虫相に影響を与えると結論づけることは適切でない」という立場を固執し、現実にいますぐ日本で栽培する可能性も少ない栽培用に限って種子の輸入を凍結し、安全性の見直しを行うというものです。
 現在、害虫抵抗性トウモロコシ(Btコーン)は、農水省が環境への影響、飼料用の安全性評価を行い、これまでに六系統(品種)を安全と確認。またこの中の三系統(品種)を厚生省が食品として安全性の確認をしています。

日本国内に食用として大量輸入

 いま日本には、年間千六百万トンのトウモロコシが輸入され、その九五%(千五百二十万トン)はアメリカからの輸入です。このうち遺伝子組み換えのBtコーンは、アメリカでの作付け実績からみて三〇〜三五%が含まれており、その大部分は、家畜用のエサとして使われているほかビール用のコーンスターチ、コーン油、ドレッシングなどの食品加工に流通しているのです。
 今回の農水省の安全性見直しでは、飼料用、食品加工用のBtコーンは「輸送時に落ちこぼれるなどして発芽しても、雑草化する恐れはない」などと一方的に断定して対象から外されているところに大きな問題があります。

 とくに家畜の飼料として使われるBtコーンは、牛乳、卵、肉などの畜産物として食卓に上っており、安全性確認の見直しは急務です。
 Btコーンは、バチルス・チューリンゲンシスという土壌微生物が持っている遺伝子がつくりだすBtタンパクの中にガやチョウなどの昆虫を殺す毒素を含んでいます。一般的には人間や哺乳類は、Btタンパクを分解してしまい毒性がないとされています。しかしBt菌にはいくつかの種類があり、その中には哺乳類や鳥類の細胞を破壊する毒素をつくるものもあるとされています。

崩れた「安全性」の虚構

東京農工大名誉教授 柳下 登さんの話

 農水省が新たな評価項目と基準を検討するにいたったのは、今まで安全性を主張してきた推進派の「安全性」の虚構が崩れはじめたことを意味している。組み換え作物の生態系への影響については、予期せぬ危険は以前から多くの人によって指摘されてきた。今日ここにいたってとは、あまりに腰が重い。
 今回の見直しが、Btを含む花粉と昆虫の関係だけに矮小化されているのは問題である。さらにBtの多面的な危険性について深く検証すべきである。

(新聞「農民」1999.6.28付)
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1999年6月

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