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中学生の「自然教室」いま真っ盛り

緑豊かな信濃平にふれあいを求めて…


 さわやかな風に早苗がゆれる五月の長野県飯山市・信濃平。冬はスキー客でにぎわうゲレンデもいまは畑になり、アスパラや根曲がり竹など旬の野菜や山菜が民宿の食卓をにぎわします。農民連・99夏の研究交流集会の会場となるこの地はいま、横浜市立富岡東中学校の二年生二百三十二人が訪れ、民宿街は若い活気があふれています。

 「キャー、カエル」「田んぼの中って温かい」「苗ちょうだーい」と、泥んこたちの元気な声がこだまする田植え体験。都会を離れ、豊かな自然、土地の人たち、風土や文化にふれあう自然教室(※)は、生徒たちが「もっとも楽しみにしている行事の一つ」です。

 田植えのほか、ソバ打ちやワラ草履つくり、餠つきなど盛りだくさんの三泊四日。見よう見真似でそば粉をこね、伸して切る、その目は真剣そのもの。自作のソバの味は「ちょっと固いけど、すごくおいしい」と大満足。杵に振り回されながらついた餠つきも、つきたてのお餠をほうばると、「もう売っている四角い餠は食べれないね」と笑顔がこぼれます。

シーズンオフも心こもる交流

 信濃平の自然教室は、「土地の人たちとのふれあい」を求める生徒や先生の思いと、「信濃平にまた来てほしい」という受け入れる民宿側の思いが重なって、より魅力あふれるものになっています。富岡東中の関範夫校長は、「ここは孫子が帰ってきたように子どもたちを迎えてくれる。甘えるわけではないが、田舎のない子が増えている中で、子どもたちの故郷づくりになっている」といいます。

 また民宿側は、九月には豊かに実った稲穂の写真を送り、十月は杵と臼を持って行って学校で餅つき、受験のシーズンには合格祈願の草鞋を送るなど、自然教室が終わった後も交流を続けます。高校生になってスキーに来てくれる生徒や親子連れで訪ねてくれる子もいるそうです。

自然や暮らし、文化を丸ごと

 信濃平で開く自然教室の数は年々増え、今年は十四校、五月から六月はびっしり。「まったく知らない学校から『今年はそちらに決めました』と連絡が入ったり、先生の間で口コミで広がっているようです」と、信濃平観光協会の岡本透事務局長は言います。

 信濃平が自然教室を初めて受け入れたのは六年前。観光協会は九一年に「信濃平の自然、暮らし、文化、歴史を丸ごと生かし、通年観光にしていこう」という信濃平構想をつくり、その一環として始まりました。こうした構想を打ち出した背景には、なんといっても観光の目玉になるスキーシーズンに、ツアーを組むエージェント(旅行会社)に宿泊料金を値切られ、民宿経営が立ち行かないということがありました。

 前出の岡本さんは、「この辺の民宿はみんな百姓です。だからまず米、野菜は自分の家で採れたものを出しましょうと。それからワラ細工の講習会など文化・歴史の掘り起こしをやり、みんなで盛り上げようとやってきた」と言います。

「民宿部会」の発足をバネに

 今年、これに新たな運動が加わりました。六月十七日の県農民連民宿部会の結成です。民宿「片山館」の足立ていさん(農民連会員)はこう言います。「農業の自立なくして、信濃平の民宿経営は成り立ちません。だから民宿を媒体にして農業を知ってもらうことが大事です。交流集会の受け入れを出発点にしたい」。
 信濃平の農業を守り、観光という地域経済を守るとりくみは、いま新たな段階を迎えています。

※横浜市では、ほとんど全ての中学校で自然教室にとりくんでいます。市は八四年から、生徒一人あたり約一万円を独自に補助(三泊四日以上が条件)。スタイルは学校にまかされ、テントで自炊するもの、ホテルに泊まって野山を散策するものなど様々ですが、最近は土地の人と交流できる民宿泊が注目されています。

(二瓶/新聞「農民」1999.7.5付)
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1999年7月

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