「農民」記事データベース990712-412-01

酪農・地元経済・雇用守れ

乳業リストラによる工場閉鎖反対

地域ぐるみの要求かかげてたたかう明治乳業争議団

千葉・市川市

 「消費者に喜んで飲んでもらえる牛乳を胸を張ってつくりたい。そのためにも日本の酪農を守ろう」もうけ本位のリストラ・合理化が進む大手乳業メーカーの中で、がんばっている労働者がいます。明治乳業から賃金・昇給の差別を受け、その撤回を求めてたたかっている争議団の人たち。いま彼らは、会社が突然打ち出した“市川工場の閉鎖”反対の運動を、地域経済を守ることと合わせて進めています。


市民ら2000人参加の集会も

 九七年十月、工場近くの小学校で開いた「市川工場存続」を求めるフェスティバルは、地域自治会、商店街の協力を得て、二千人が参加し大成功しました。明乳が、二〇〇〇年三月限りの工場閉鎖を発表してから八カ月後のことです。参加者からは「地域発展のためにも市川工場をなくさないで」という声がたくさん出されました。争議団市川提訴団の小関守団長は、「大企業の身勝手で、労働者を犠牲にし、地域経済に不安を与えることは許せない」と言います。

 明乳は、茨城県守谷町に敷地面積約三万坪、これまでの三分の一以下の人員で三〜四倍の処理能力をもつ大工場を建設。市川工場を閉鎖し、埼玉・戸田、神奈川・茅ケ崎にある工場の一部も移転する計画です。明乳は、市川工場跡地の売却で、新工場の建設資金約八十億円を上回る金額を手に入れることができます。一方、身勝手な工場閉鎖は、そこで働く労働者、地域経済に大きな影響を及ぼします。

 約五百人の労働者のうち正規従業員は、新工場や戸田工場などに配転。とりわけ深刻なのは無権利の臨時従業員で、争議団は会社と交渉し、希望者全員の関連企業などへの雇用斡旋、退職慰労金の支払いを勝ち取り、「あなた方がいるから安心して働ける」との言葉が寄せられました。

地元商店街も「移転は困る」

 また地域経済への影響も深刻です。かつて、この辺の工場群の労働者でにぎわった大洲商店街は、「以前のにぎわいはまったく見られない」と、市川民主商工会・和木辰夫副会長。「大きなショッピング街ができたら困る」(薬剤店・店主の鈴木和弘さん=42)と言うように、工場の跡地利用に関心が集まっていますが、明乳は何も明らかにしていません。

 争議団と「工場を存続させる会」は、こうした声とともに一万筆以上の「閉鎖中止を要請する」署名をたずさえ市川市とも交渉。席上、市長は、「地域経済と雇用問題に関しては、あなた方と考えは同じ。『事業を縮小しても存続させてほしい』ということで明乳と交渉する」と表明しました。

大企業の「もうけ主義」を告発

 乳製品の自由化で、安い輸入原料を使ってさらにもうけようと、各メーカーが工場の統廃合を急ピッチですすめています。農水省も、九六年の「基本方針」で八百余ある工場を二〇〇五年をめどに五〜六割に削減する目標をたて、補助金(費用の三分の一)を出して促進しています。

 企業のもうけ主義を告発し、労働者の権利を守るためにたたかってきた明乳争議団。かつてコーヒー用クリームの工程で働く労働者の髪の毛が脱色するという事件が起きたときも、「消毒用品が危険だ」と問題にし、製造が一時中止されました。今年市川市議に初当選した争議団出身の二瓶忠良さんは、「たたか労働者が職場にいるということは、企業のもうけ本位のやり方にチェックが働くということ」といいます。

 今年四月、彼らは支援する人たちとともに農水省と交渉しました。要請項目は、(1)日本の酪農を守ること、(2)産業再編から雇用・暮らし・地域経済を守ること、(3)異常な労働者管理をやめるよう明乳を指導すること、の三点。「いい製品をつくるのはわれわれ食品業界に働く労働者の使命。そのためには国内の酪農家がつくる新鮮な乳が必要」という争議団の人たち。いま日本農業を守る労働者と農民の団結の輪が広がっています。

(二瓶康一/新聞「農民」1999.7.12付)
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1999年7月

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