「農民」記事データベース990809-416-02

木曽路にみる農のいぶき

山間地再生へ、産直にかける期待

長野・山口村からのリポート

 農業つぶしが進むなか、島崎藤村が「木曽路はすべて山の中」と言った木曽谷でも元気に農業を続けている町や村があります。その一つ、長野県木曽郡山口村(人口二千百十五人)をリポートします。


朝、12の集落から野菜を集荷

 木曽川を眼下に家々が点在するなかに青々と茂った石垣積みの棚田が広がります。休耕した〇・五アール〜十アールの畑にナス、キュウリ、サトイモ、グラジオラスなど十種類以上の作物が育っています。

 山口村農産物直売組合の活動は、朝八時から始まります。十二の集落に集荷所(農家の庭先)があります。組合員は朝食前に収穫したナス、キュウリ、キャベツ、花束などを袋詰めにして、百円、二百円、三百円と値段をつけて集荷所に出します。組合役員が毎日順番で自動ラベル器を持って農作物の出荷伝票と合わせながらラベルを貼りつけ集荷します。九時頃には、村内にある国道十九号線の道の駅「財母」と馬篭宿にある「ふれあい広場」に並べます。

 岐阜県可児市から毎週土曜日か日曜日には買いにくるという三十代の女性は、「価格が安い、高いではなく、朝採りの新鮮さが良い」といっぱい買っていきました。

65歳以上が7割占める産直組合

 直売の活動が始まったのは五年前です。営林署の苗畑に「道の駅」ができ、村の振興公社が運営することになりました。老人クラブ、婦人団体が集まって、馬篭宿の「ふれあい広場」で自家用の残った農産物を売り始めたのがきっかけとなり、農産物の直売所を作ろうと山口村農産物直売組合(楯久利組合長)を結成しました。
 現在、組合員は百六十人で、六十五歳以上の組合員が七割を占めています。地の利もあって、買い物客が多く、売り上げは順調に伸びています。村や農協が直売所に職員を出すなどの援助をしています。

金かかりすぎる棚田整備事業

 畑から収穫したばかりのナス、キュウリ、トウモロコシを袋詰めをしていた林いつ子さん(74)は、「数年前までは自家用に作って残ったものを畑などに捨てていたが、いまはお金になる。おじいちゃんに小遣いを渡すのですわ。あはは……」と元気です。

 楯組合長は「『ふるさと広場』の経験から、組合を作り、五年目になる。診療所通いをしていた年寄りが、元気にもの作りを始めたのがうれしい。若妻会の人たちも勤めの合間に花作りやパプリカなど新しい作物を栽培し、参加してきているのも本当に頼もしい」と語っています。

 条件不利地の農業が、どんどんつぶされていくなかで、行政がちょっと手をかすだけで山間地農業が再生できる見本のようなものです。
 山口村では、いま耕地の基盤整備事業が計画されています。しかし、耕地が狭く、しかも石垣積の棚田なので、平場のような五十アール〜一ヘクタールという規模の整備事業ではお金がかかりすぎ、米の収入だけでは、とても払えません。年金で払ったとしたら、生活ができなくなります。かといってトラクターなどの機械を入れて作業しようとしても、二百年〜三百年もたつ石垣が、崩れる不安もあります。

「木曽にも農民連の旗を」の声

 山口村の農民組合員の林茂さん(75)は「国や県の一方的な計画ではなく、農民の要望にもとづいた整備事業が必要だ」と言い、「新聞『農民』の読者を増やし、ここ木曽にも農民連の組織をつくり、農民の要求を実現させていきたい」と話しています。

(長野県連・山下始胤/新聞「農民」1999.8.9付)
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1999年8月

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