「農民」記事データベース990816-417-04

転作奨励金打ち切りまでたくらむ農水省


 農水省は、米の投げ売りだけでなく、転作奨励金の廃止までねらっています。

 一九八三年の「第二次臨調答申」以来、「転作奨励金依存からの脱却」つまり転作奨励金の打ち切りは、政府・自民党の長年の宿願でした。
 八三年の転作奨励金の単価は十アール当たり五万二千九百十一円。ところが翌八四年には三万八千八百五十五円と三割近く下がり、史上最高の減反を押しつけた九八・九九年には、一万二千百三十九円と、五分の一近くにまで下がりました。
 今度は、この息の根を止めようというのです。

 いきなり転作奨励金をゼロにすることに対しては、当然強い抵抗があります。それで持ち出したのが“自給率の低い麦・大豆に助成を重点化する”という議論。

「自給率向上」を殺し文句に

 農水省の“減反「改革」大綱”=「水田を中心とした土地利用型農業の活性化の基本方向」(七月十四日)によると――。
 (1)今後は減反に協力しただけでは奨励金は出さない
 (2)麦・大豆などを、規模拡大して低コストで生産する人に限って奨励金を出す
 (3)野菜・果実についてはわずかばかりの助成金を出すが、二〜三年で打ち止め。
 ――要するに「自給率向上」を殺し文句に、これまでは減反・転作に応じた農家がすべてもらえた転作奨励金をかすめ取り、ごく限られた農家にしか出さないというねらいです。

 しかし、本気で自給率を向上させようというのであれば、思い切った財源確保が必要です。ところが「当てにできる自給率向上の財源は、転作奨励金ぐらい」(農水省幹部、日本農業新聞、七月二十一日)――。自給率向上はほんの掛け声で、本音は転作奨励金のかすめ取りという本音は見え見えです。

将来は麦、大豆奨励金も廃止

 さらに問題なのは“将来的には、転作奨励金も、稲作経営安定対策(米価補てん制度)もゴッチャにして、大規模農家の「経営安定措置」の財源にあてる”という方針です。

 米価補てん制度は、自主流通米助成金をかすめ取って作られたもの。今度は転作奨励金もかすめ取り、両方の財源を合わせて作る「経営安定措置」とはどういうものか――。
 そのモデルは、農家と政府が掛け金を半分ずつ積み立て、農家の収入が減ったときに支払うカナダの「収入保険制度」です。しかし、しょせん保険は保険。大資本の買いたたきが続けば、保険の財源はすぐに底をつき「経営安定」にも効果がないことは、米価補てん制度で経験ずみです。

 カナダはもともと価格保障制度がなかった国。
 日本のように、価格保障を廃止して役に足たない収入保険を作る、しかもその財源は自主流通米助成金や転作奨励金の衣替えで済ますなどというのは、とんでもない逆立ちです。

(新聞「農民」1999.8.16付)
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1999年8月

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