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第145国会の終了にあたって

農民連小林節夫代表常任委員が談話/1999年8月14日


 一月以来、五十七日の会期延長をした第百四十五国会は閉会した。
 この国会は、長引く不況のもと、国民生活が悪化するなかで、消費税を三%に戻すこと、年金・医療など社会保障の充実などが求められていたが、国民の願いをまったく無視して、自民・自由・公明の連立勢力がろくな審議もせず、数をたのんで悪法を強行した国会であった。

 一方で、バブルで放蕩三昧をし、政官財の悪の癒着を重ねた結果生まれた破綻に対し、「国民の預金保護」の名目で、銀行支援六十兆円の公的資金(国民の税金)をつぎこんだ。国の当初予算に匹敵する額である。ムダ遣いの代表である公共事業は相変わらずである。不況に喘ぐ国民にこそ振り向けるべき予算はかくのごとく使われた。まさに逆立ち政治である。

 食料・農業問題をめぐっては、文字通りアメリカと財界の主張を受け入れた戦後政治の総決算というべき悪法の連続であった。

 第一に、コメ関税化法の強行である。日本共産党の追及によって「ミニマム・アクセス米の輸入は義務だ」という根拠が余すところなく崩されたにもかかわらず、国際的にも通用しない勝手な解釈をして、数をたのんで強行した。きわめて象徴的なことは、政府・自民党が農協中央を抱き込み、いわゆる「三者合意」を表明して、関税化をきっかけに農政をこの方向に推進することを申し合わせたことである。

 第二に、新農業基本法(食料・農業・農村基本法)が国民的議論も国会審議もまったく不十分なままに強行採決したことである。それは、間もなく食料自給率が四〇%を割る情勢にもかかわらず、農畜産物の一切の価格保障を打ち切ってしまう方向を決めたものである。
 不平等この上ないWTO農業協定を改定するのではなく、逆にその忠実な受け入れをするための基本法であり、日本農業と農民経営を根本から危うくする許しがたい悪法である。日本共産党以外のすべての政党がこれに賛成した。

 第三に、卸売市場法の大改悪である。その中心点は「セリ」を原則からはずし、農水産物の価格を相対で決めることを原則として、卸売市場を事実上、大手量販店の中継基地化するものであり、しかも地方自治体が設置するにもかかわらず、実際の運営は自治体を“つんぼさじき”におき、大資本の思うままに運営する道を開いたことである。これは、農産物の価格を思うがままに買いたたく足がかりとなるだろう。

 第四に、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)の一部「改正」案が成立したことである。「消費者の視点」を政党が重視するのは理解できる。化学肥料や農薬の多用が改められなければならないことも言うまでもない。  しかし、いま直ちに化学肥料や農薬の全廃を求め、それ以外は「有機農産物」と表示することを禁止するというが、果たして化学肥料を全廃して人類の食料をまかなえるのか? 「堆厩肥やナタネ・大豆の粕などの有機質肥料を使う」といっても、これらの生産に使われる化学肥料を無視できるのか? 日本のような火山灰地の多い農地で燐酸肥料を否定できるのか? コーデックス委員会への盲従ではないか?

 何よりも今日のような農薬の多用を来したのは、農業を工業と同列視した「効率化・規模拡大」万能の政策を輸入自由化路線のもとで進め、農民を追い込んだ政治の責任である。また、これを実施するというなら、それにふさわしい関連諸施策が不可欠であるが、まったくなんの保障もない。無視しえないのは、農産物輸入のいっそうの拡大をねらう大商社などが、この法律を国内農産物を買いたたくうえで最大限に利用しようとしていることである。

 戦争法など、日本国民の血であがなった憲法の平和的・民主的条項、とくに第九条を真っ向から踏みにじる一連の暴挙も今国会の著しい特徴である。「日の丸・君が代」法の強行には侵略戦争への一かけらの反省もない。ここでも審議抜きの強行であった。アメリカの世界戦略に従い、これを補完するための体制の新たな強化である。

 この国会を通じての大きな特徴は、これらの悪法が国民の支持を得ないにもかかわらず、民意を無視して、国会の中の多数だけで決めたことである。それを可能にしたのは自自公連立による数の暴力だった。しかし、自由党と公明党は、前回総選挙で「自民党政治反対」を掲げた政党であり、自自公連立は致命的な弱点をもった体制である。

 農業の振興や再生、景気の回復や実施目前の介護保険など、かれらには国政のあらゆる面で解決能力はない。世論にさからい、このような弱点をもった連立に未来はない。かれらの暴政は自らの墓穴を掘るものとなるだろう。

 ともすれば目前の悪政の前に、国民生活と農業の未来に展望を失いがちであるが、今後、紆余曲折はあっても、自民党政治の破綻は必至であり、自自公連立に未来はない。
 たたかわないかぎり、かれらは決して自ら支配者の座をおりることはない。われわれは、かれらの暴挙を糾弾するだけでなく、次の総選挙できっぱりと審判をくださなければならない。いまたたかわずして、いずれの日にたたかうか。農民連はその決意を新たにする。

(新聞「農民」1999.8.23付)
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1999年8月

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