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果てしない大草原

中国領・内モンゴルを旅して


 夏真っ盛りの中国領内モンゴル自治区の農村を旅しました。
 内モンゴル自治区は、中国政府から一定の自治権を与えられている中国東北部の地域。東西に長く、東は北朝鮮、極東ロシアに面し、西はゴビ砂漠、バイカル湖に続く広大さ。

かつては日本の軍隊が駐留した

 首都は呼和浩特(フフホト)といい、モンゴル語で「青い城」という意味です。人口は二千四百万人で、そのうち約四百万人がモンゴル族、他に回族をはじめ数十の民族が住む多民族自治区です。
 呼和浩特市から東に向かい、車で四時間かけ武川市の先にある果てしない大草原をめざします。(戦前、日本軍が武川市に駐留し、多数の中国人、モンゴル人が亡くなりましたが、学徒動員された画学生の一人も、ここで戦病死し、その画学生の描いた画が長野県上田市の「無言館」に展示されています)。

移動用住宅「パオ」で歓迎うける

 この地域は、羊を中心とした牧畜が盛んで、いまでも移動用の住居・パオを建て、家族で暮らしている農民も少なくありません。
 私たち一行は、二台のバスで海抜二千メートルにある先祖代々、羊を飼っている五十代の牧畜農家を訪ねました。羊を数百頭飼っている平均的な農家夫妻は、ジンギスハーンと同じ格好の民族服を着て歓迎してくれました。

 最初に移動用のパオに案内され、クリーム色のお茶(お茶のなかに馬乳と少しの塩をきかせたもの)を飲みながら交流しました。そのなかで、以前、国は人民公社方式のため共同経営が基本で、働いても働いても同じ給料しかもらえず、なりゆきまかせだったので生活は苦しかったという話をされました。
 しかし、中国の毛沢東以後の改革開放政策で、家族経営を中心とした政策に変わってから、わずかの地代を払えば生産した物は農民の所有になることから、発展が始まったそうです。

風力発電で生活にもゆとりが…

 この農家もパオとは別に固定式の日干しレンガの家を持ち、風車を利用した発電でテレビを見るなど、こざっぱりながらも、なかなかの生活水準のように見えました。もちろん、日本の農村と比べれば大きな隔たりはあります。
 しかし、見渡す限りの大草原に羊を放牧し、週末には町から帰ってくる子どもたちと、手を出せば取れそうな満天の星を見ながら家族一緒で暮らすと言います。最近、中古のトラックを買い、貯金もできるようになったとも言います。
 日本の仲間が「暮らしはどうですか」と聞くと、二人顔を見合わせて「農業は楽しい。幸せです」とはにかみました。

日本とは大違いのびのび牧畜

 日本の畜産は、密飼いと配合飼料の多投で環境問題が起きていますが、モンゴルの草原飼育は、粗放とハーブの匂いのする牧草や長さ十数センチの野草などで飼育しているために糞の臭いがまったくしません。
 モンゴルの農民は、地域にあった農産物を思い切って生産し、国はそれを奨励しています。「なんと当たり前のことが、日本政府は出来ないのか」と、大草原の彼方にあるわが祖国に思いを馳せました。

(埼玉県連・松本慎一/新聞「農民」1999.8.23付)
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1999年8月

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