「農民」記事データベース991025-425-01

許せない悪徳商法 第2弾

波紋ひろがるニセ“新米”追求

食糧庁など実態調査を開始

農民連・茨城県連、徹底糾明と補償要求

関連/常識超えた“激安”のウラに…消費者ら新米判定テスト外米はどこへ消えた

 農家には豊作だといって、生産者米価を昨年より二千円も安く買いたたき、消費者には、新米と偽って“古米ゾロゾ口”ニセ表示米を売りつける。こんな悪徳商法を追及した本紙(九月二十七日号)は、各地で大きな反響を呼んでいます。愛知の消費者グルーフは「偽物横行の記事を紹介」と、“怒りの情報レター”を全国に発信。首都圏の米屋さんや消費者団体などからは、農民連食品分析センターへ米鮮度判定キットの注文が殺到、ニセもの追放の検査運動も始まっています。食糧庁や日本穀物検定協会が「消費者の不満が高まっては大変」と、いっせいに実態調査に乗り出しました。その波紋を追って悪徳商法追及第二弾。


消費者から通報あれば立ち入り調査行う/食糧庁

 新聞「農民」がでた直後の九月下旬、「おたくの新聞が取り上げたからというわけではないが、知り得た情報、タレ込み、消費者からの投書などがあれば、事実確認の立ち入り調査を行うことになっている」(食糧庁計画流通部流通課米流通消費対策室の二井氏)といい、「食糧庁からは東京、神奈川、千葉、埼玉の食糧事務所に対して、『事実を確認し、内容についてもチェックするように』との指示がだされた。このため東京食糧事務所でも卸、販売店を回って事実の確認を行うと同時に、サンプルを集めて内容のチェック(表示と中身について)など調査中」(同業務第一部長の池沢栄次郎氏)と語り、本紙の追及が行政を動かしています。

「黒」の判定に開き直る/疑惑の大手卸「ミツハシ」

 古米が二〇%も検出された「ミツハシ大満足新米(産地混合)」を売っている米卸大手の(株)ミツハシ。十月十三日、横浜市金沢区の本社を訪ね、執行役員・経営企画室長の谷口義武氏にインタビュー。
 谷口氏はのっけから「農民連の試験液では鮮度を調べるもので、新米・古米の判定はできない。古米は使っていない。新米だけだ」と自信満々の口ぶりで主張します。古米か新米かこれが米の“鮮度”のはず。ところが、「鮮度の判定だけで、古米、新米の判定はできない」とぬけねけと言い張る谷口氏。

「分析センターと同様な試薬使用」/東京食糧事務所担当官

 事実はどうでしょうか。東京食糧事務所の池沢氏は「新米か古米かの判定は、いまのところ溶液に漬けて、新米は緑色、古米は橙色に変わる鮮度判定と、一粒一粒が紫色に変わる方法がある。何年産の古米かというところまでは識別できないが、古米が混入しているかどうかは、これらの鮮度判定によってある程度識別できる。食糧事務所の検査官も、こうした試薬を使って行う」と明快です。

 同食糧事務所は卸、販売店を回って調査中で、「結果が不適正な事実が明らかになれば、業者の公表もする。悪質なものは認可の取り消しもありうる」(計画流通・消費係の佐藤氏)。
 谷口氏は「お客さんには説明し、ご理解を得ている」と胸を張りますが、食糧事務所の調査では、どう言い逃れするのでしょうか。

「検査結果は公表しない」/認証した穀物検定協会

 「ミツハシ大満足新米」を販売した東京・港区にあるダイエー広報部は「穀物検定協会の認証マークが貼ってあるので、ミツハシさんを信頼して販売した」といいます。「認証」の実態は、どのようなものでしょうか。

 一九九五年十一月に施行された新食糧法にもとづき、表示と中身が一致しているかどうかを認証する制度が新たに導入され、日本穀物検定協会が「認証マーク」を発行しています。同協会の認証員が、精米能力二十五馬力以上の精米工場に行って、原料玄米の入荷量と製品生産高などを帳簿と伝票でチェックし、表示と中身が一致しているかどうかを確認します。

 同協会開発課の斉藤氏は「記事を見て、認証した米に何か問題があるといけないので、出荷日が違うが同じものを購入して、鮮度の判定を行った。守秘義務があるので結果は公表できない」とつれない返事。精米表示に対する信頼を確保する認証機関が、なぜ堂々と公表できないのでしょうか。食糧事務所が調査を始めたり、裏帳簿を作ってごまかしている米卸の実態がNHKテレビで明らかにされているなかで、悪徳商法をかばうような姿勢は問題です。


常識超えた“激安”のウラに…

外米ブレンドの可能性も

 長引く不況で少しでも安いものをという消費者の要求は切実。だから新米という表示を信頼してお米を購入しています。ダイエー広報部は「消費者のニーズにこたえて『ミツハシ大満足新米』を千八百九十円で販売した。利益は少ない」といいますが、これは明らかに原価割れです。

 いま、米卸は、他社との競争にも負けないように大スーパーや量販店の低価格要求にこたえていかなければならないという状況に直面しています。
 「卸としては、スーパーなどの低価格の要求に応じるために、古米を混ぜることもありうる。二割くらいまでなら古米を混ぜても消費者がわからないというのは米業界の常識だ」(米流通関係者)といいます。

 一方、スーパーなどの低価格の影響をもろに受けながらも、各地のお米屋さんは、「本物を食べたい」という消費者の要望にこたえて頑張っています。

 古米ばかりではありません。東京食糧事務所の池沢氏は「SBSで入る外米が、商社、卸を通じて業務用として食堂などに販売されている。これが一般消費者向けの米にブレンドされる可能性はある。宮崎の早場米が出たころ、オーストラリア新米が入り、ブレンドされたという噂は聞いているが、その事実は確認していない。オーストラリアの新米が早場米の穴埋めにされることは考えられる」と指摘します。

 ミツハシは、オーストラリア米の独占的な生産者団体「オーストラリアン・ライス生産者組合」との合併会社「サンライス」を設立し、一九九五年から日本向けの輸入を行っています。
 谷口氏は「オーストラリアのコシヒカリと日本のコシヒカリに違いがあるんですか」と開き直り、堂々と「良いお米の入手先を日本全国から全世界へと拡大」とパンフレットに書いて宣伝しています。

 いま、農民連食品分析センターは、導入したDNA分析装置を使って“ニセ国産”“ニセ銘柄”の分析を準備中です。インチキ商法を指摘されても開き直る――こういう悪徳商法にメスが入る日も近いのです。

分析センターの試液

 農民連食品分析センターが使った米の鮮度判定試験液は、メチルレッドとブロームチモールブルー液の混合液をアルカリで調整したもので、古米の脂肪が分解してできた酸に反応し、新米は緑色、古米なら橙色に着色します。分析センターでは、米の鮮度判定液キットを二千五百円(送料込み)で販売しています。(TEL03-3975-4482)。


アラ、やっぱりインチキね

東京・杉並/消費者ら新米判定テスト

 「新聞『農民』で“新米から古米ゾロゾロ”って書いていたが本当? 私たちも試薬で調べてみよう」――東京・杉並区の東都生協の消費者グループが、十月九日、「すぎなみ生活展」の展示場で新米古米判定テストに挑戦しました。

 テストしたお米は、新聞「農民」で報道したのと同じものを取り寄せました。ダイエーで売っていた「ミツハシ大満足」「オーストラリア産コシヒカリ」(精米業者ミツハシ)、サティで売っていた「千葉県産コシヒカリ」(同業者木徳)、ライフで売っていた「千葉コシヒカリ市原産限定」(同業者ナンブ精米)など七点と千葉県山田町の産直米「愛情ゆうき米」。

 試薬は東都生協の品質管理部で独自に精製した30MBという鮮やかなショッキングピンク色の溶液です。米粒のなかの脂肪分の酸化の度合いを調べる原理は分析センターの試薬と同じで、新しい米粒ほど深い緑に、古い米粒ほど赤く色づきます。

 さて結果は…やはりスーパーの七品目はすべてクロ。表示では新米百パーセントと銘打ったお米のなかに、オレンジや赤に染まった米粒がたくさん混じっています。東都生協組合員のお母さんたちも「アラやだ。本当に古米が混じってるわ」「これ本当に新米百パーセントの表示で売られてたの?」とビックリ。

 テストを見た夫婦連れの見学者も驚いて、「どうしてこんなことが起こるの?外米は嫌だけど古米なら構わないのに、表示でウソつかないでほしい」と憤慨。年配の女性も「結局一番困るのはお米を食べる消費者ですよね。農家もお米が安くて大変ですね」と話していました。
 また、山田町の産直米は今回も正真正銘の“新米”であることが証明されました。


外米はどこへ消えた

卸→小売り…8割が不明に

 外米を卸が小売に売ったサンプルが二十都府県・三十六件あるのに、小売が外米を売ったのはわずか六都府県・八件――。「ニセ国産米」が広範に出回っている実態が食糧庁の調査で浮きぼりになりました(表)。

 食糧庁が毎月行っている米の小売・卸売価格の実態調査では、国産米の価格とともに、外米の取引価格を調べています。
 サンプル調査なので、取引件数・量は不明ですが、それにしても、卸から小売に三十六件売っているのに、消費者が直接買っているのはわずか八件で二割(八月調査)。
 七月は三十一件に対して十一件、六月は二十七件に対して十一件で、食い違いがますます拡大しているのが特徴です。

 これが「ニセ国産米」としてブレンドされたことは容易に察しがつこうというもの。不足のはずの国産新米“ダブつき”の原因を示していることは間違いありません。

どこに消えた?外米
99年8月分(9月30日公表)
 卸 売小 売
 タイ米アメリカ米中国米豪州米タイ米アメリカ米中国米豪州米
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福 岡      
佐 賀     
熊 本       
20都府県 36サンプル6都府県 8サンプル
(注)
(1)食糧庁調査のうち、外米販売実績のある都府県だけを抜き出して比較した。この調査は価格調査なので、販売数量などはわからない。
(2)食糧庁「米穀の卸売価格調査結果」「米穀の小売価格調査結果」(いずれも99年8月分)から作成。

(新聞「農民」1999.10.25付)
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1999年10月

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