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国際世論の広がりに孤立した米国

シアトル WTO閣僚会議が決裂

世界の流れ変える大きな出発点に

関連/全米家族農家連合と交流大半は平和的デモ

 アメリカのシアトルで開催されていた世界貿易機関(WTO)閣僚会議は最終日の十二月三日夜(日本時間四日午後)、農業、反ダンピング(不当廉売)ルールの見直し、途上国の労働問題などの取り扱いをめぐって各国の意見が対立、また途上国の交渉参加のあり方などの問題が解決せず、宣言の採択を断念し閉会、次期貿易交渉(新ラウンド)の立ち上げは失敗に終わりました。その直後に現地・シアトルから真嶋良孝農民連事務局次長(新聞「農民」編集長)からの報告です。


 WTO閣僚会議が新ラウンドについて何の方向も示さずに決裂したことは、正直言って「ざまあみろ」という気持ちです。シアトルに来て心に残ったのは「WTONO」の運動が全世界に広がっていること、アメリカなどが発展途上国を無視して強引に合意作りを進めたことに対する反発の強さでした。こういう世界の流れが大きな力を発揮しつつあることに、ワクワクする思いでいっぱいです。

 私たちはシアトルで全米家族農家連合(NFFC)と会談しましたが、初めてとは思えないほど共感を抱きあい、「WTOの枠組みを越えた公正な貿易ルールの確立」のために、農民と消費者、国民が団結して、それぞれの政府とWTOに対するたたかいを強めることを合意しました。

 世界の食糧と農業を守る運動にとって、シアトルは大きな出発点になりました。たたかいはこれからです。


シアトルで農民連・食健連代表団

全米家族農家連合と交流

営農・食の安全など実り多い対話

 十一月二十七日午後三時、成田を発ち、同じ二十七日朝七時に現地に着くという不思議な体験をしながら、WTO第三回閣僚会議へのアピールと世界のNGO・農民組織と交流する旅は三日目を過ぎました。

 この三日間の行動で一番感激したのは、全米家族農家連合(NFFC)のビル・クリスティソン会長、ジョン・キンズマン副会長ら(みんな農民です)と交流したことです。

 交流は二十八日十七時三十分〜十九時三十分に行われましたが、NFFC自体がNGOイベントをいくつか主催・共催しており、とても多忙な中で二時間も時間を割いてくれたことは驚きでした。そのなかで、

 (1)アメリカと日本という世界で最も資本主義的な国で、家族農業を守ろう、国民に安全な食べ物をという組織が確固として存在することを確認しあったこと。

 (2)日本の自給率の低さ、ミニマム・アクセス米の押しつけ、そのなかで四割も減反が強制されている事実に、NFFCのみなさんが本当に驚いていたこと。

 (3)WTOと一九九六年農業法のもとで、トウモロコシ価格が一九五〇年と同じ水準に下がり、わざと農機事故を起こして生命保険をもらうという形の自殺が相次いでいる。さらに農外に就労することが増えた結果、離婚がペストのように広がっているこういう状況のもとで、「政府はアメリカ農業の『成功』をいうが、家族農業に起きている事態には一言もふれていない。農家の半数以上はNFFCに同調していると思う」などの発言に胸をつかれたこと。

 (4)日本に行ったことがあるという女性からは、「小規模の家族農家が、いろいろな所で食べ物を作っていること、しかも持続的て健康的な農業を営んでいることに大いに学んだ。WTOがあるかぎり家族農業は守れない。互いに学び合い、協力しあって農業を守ろう」という発言があったことなどなど、実り多いものでした。

 NFFC側から初めて日米の家族経営組織が話しあい、共感したことを共同で発表しようではないかという提案が出されています。

(十一月三十日 真嶋良孝)


大半は平和的デモ

「過激行動は一部」と報道/シアトル

 当地は、夜七時から朝七時半まで「夜間外出禁止令」という“戒厳令”状態です。

 日本では暴動だけが面白おかしく報道されているかも知れませんが、私たちが参加した十一月三十日のデモは六〜七万人の隊列で、かなりきびしく、しかし陽気なデモでした。

 現地の新聞は「大半は平和的なデモ。ほんの一部が意味不明の過激な行動をとっている」と伝えています。きょう(十二月二日)も農民だけの短いデモ(ラリー)をやりましたが、整然としたものでした。アメリカ人自身が「ノン・バイオレンス」を強調しています。明日は、ツアー一行は一日かけてリンゴ試験場の見学ですが、私たちのグループは市内に残り、簡単な観光とWTO閣僚会議の情報集めをします。

(現地時間十二月二日午後八時、真嶋)

(新聞「農民」1999.12.13付)
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1999年12月

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