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遺伝子組み換え作物

未知の新病原菌発生の恐れ

来日した欧州エコロジー研究所長が警告

関連/原料混入率上限はずす農水省


 フランスの植物学者で、ヨーロッパ・エコロジー研究所長のジャン・マリー・ペルト氏が十一月二十七日来日、東京・明治大学で「遺伝子組み換え植物の健康と環境に対する危険性」について講演しました。

 主催したのは「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」。

 ペルト氏は、遺伝子組み換え作物に導入された抗生物質耐性遺伝子が人間や土壌微生物に移行し、新しい未知の病原菌が生み出される危険性について、つぎのように指摘しました。

 一、遺伝子組み換え(GM)種子の中には、導入した遺伝子が目的どおりに働くかどうかを確かめるため抗生物質耐性のマーカー遺伝子が使われている。これがその後どうなるか、これを食べた人や動物の腸内細菌、土壌中のバクテリアにどの様な影響を与えるかの詳しい研究は全く行われていない。土壌中のバクテリアは遺伝子を相互に交換し、組み換えられる。

 世界的に優れた抗生物質の専門家の九〇%は新たな病原菌を作りだす危険性が高いと指摘している。

 一、Bt毒素を組み込んだトウモロコシやラウンドアップ(除草剤)耐性大豆は、体内で消化されるという。しかし元のトウモロコシや大豆の脂肪の中にはその毒素が蓄積されてゆく。またそれを食べる人間も、長期に摂取すれば毒素が残留し、体の抵抗力が弱くなる。GM食品を食べた動物が体内でどの様な影響があるか、長期的な調査、研究が必要だ。

 一、種の壁を超えて遺伝子を導入することによって、新たな病原体を作りだしてしまう危険性がある。植物性のウイルスが人間に対する病原体になることも考えられる。エイズのウイルスもどうして出来たかもまだ分からない。

 GM作物が、人間の健康にとって破局的な影響が現れてからでは取り返しがつかない。このようなリスクだけでも「予防の原則」を適用して安全性が証明できるまで農業や食品への適用、商業生産をストップすべきである。

 またペルト氏は、WTO交渉に関連し、「日本もそうだが、フランス人は食べ物の質(安全性)に非常にこだわっている。アメリカ人はファースト・フードのような、脂肪が多く、赤肉や糖分の多いものを好むが、われわれはそうではない。自国の食文化を守り、GM食品に対しては両国が共同して規制を強化していく必要性」を強調しました。


遺伝子組み換え表示基準

原料混入率上限はずす農水省

 農水省は十一月二十九日、二〇〇一年から実施する遺伝子組み換え食品の表示義務化に関して、日本農林規格(JAS)の品質表示基準案を公表しました。

 表示対象は農水省が八月十日にまとめた骨子よりもさらに大幅に後退、対象品目も前回の三十品目から今回は大豆とトウモロコシを主原料とした二十四品目だけに限っています。

 なかでも遺伝子組み換え原料の「不使用」表示をする場合、さきの表示案では最大五%まで組み換え原料の混入を認めていましたが、今回はこの上限も外してしまい、企業側の自主判断に委ねるとしています。これでは一〇〜二〇%の組み換え原料が混入していても「組み換え原料不使用」といった不当表示の横行を許すことになります。

 農水省は、分別流通管理のマニュアルを作り、この通りやれば「意図せざる混入」があっても不当表示の責任を問わないという「免責条項」まで設けています。

 一方、欧州連合(EU)は、組み換え原料の混入率を最大一%、「不使用」表示は〇・一%と、極めて厳しい基準です。日本が、混入率の上限も外し、大幅に基準を緩めることは、ヨーロッパなど世界各地で拒否された遺伝子組み換え食品が大手を振って日本になだれ込んできます。

 農水省が今回公表した表示基準案は、消費者、国民の要求に逆行して、食品業界に大幅に譲歩し、遺伝子組み換え作物の大量在庫をかかえ窮地に立つアメリカに救援の手をさしのべたものといえます。

 なお農水省では、この表示基準案への一般からの意見・情報を募集しています。提出締切日は九九年十二月二十八日(1)郵便 〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1農林水産省食品流通局品質課品質表示担当。(2)電子メールshhinsitu3 comme@nm.mff.go.jp

(新聞「農民」1999.12.13付)
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1999年12月

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