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韓国見て歩る記

農民連事務局長 谷口一夫


 韓国の農民・農村の深刻さは日本以上です。

 韓国の面積はほぼ北海道に匹敵します。農家戸数は日本のほぼ半分、百五十六万戸です。農業だけでは食っていけない低農産物価格のうえに経済危機が加わり、企業的農業(日本で言う農民の法人化組織)もうまくいきません。

 家族経営はもっと深刻です。六割を占める専業農家は直撃を受けます。九五年失業率が二%であったのが九八年は六・八%、九九年八月は五・九%と約三倍に増えています(日本は四・九%)。このため兼業農家も働き口が簡単にはみつからず大変です。

 いま一番大変なのは負債の問題です。返しようがなく、自殺・夜逃げが起こっています。

 この打開のために、全国農民会総聯盟(韓国全農)は、食糧自給型農業実現、環境保全型農業実現、所得保障型農業実現、統一対備型農業実現の四大目標を掲げてたたかっています。

 同時に労働者・国民と共に国の民主化、民族の自主化と祖国の平和統一を成し遂げる運動を果敢に行っています。

 地域組織のオルグに回っていて遅れて会談に望んだ劉相郁事務総長(三十九歳)はつい四カ月前まで四カ月間投獄されていました。鄭光勲議長(六十一歳)も四年間投獄されました。民主化闘争の荒波にもまれた者の目の輝きを感じました。

 「韓国の農民組織では唯一、自主的なたたかう組織です」という鄭議長と同じたたかう仲間としてガッチリ握手を交わしました。

 李鍾華政策室長(三十五歳)は、農民連のたたかいやWTO協定改定の中身について「全く同感です」と終始相槌を打っていました。昼食をご馳走になったあと、車での引き売りをやっているのを見て、「あれをやってでも日本の農民との交流にいきたい」と熱意を滲ませていました。

 それにしても、漢字の筆談も通用しない、もっぱら通訳の崔永穆さんに頼るしかない情けなさで、しみじみ何とかして韓国語をという思いにかられました。

 ソウルについた十一月二十二日、空き時間を利用して地下鉄で東大門市場に出かけました。その大きな一角が漢方薬や生活備品など製造所も兼ねた卸問屋の集まりで、若い労働者の多いのには驚きました。

 大通り沿いにずらっと並んで、おばあちゃん主体の農産物などの直売をしています。首都ソウルで農業機械ではなく、韓国伝統の農具屋が何軒もありました。

 その一角にあるのが、ニンニクの匂いがむせかえる韓国料理の大衆的食堂街です。一つの通りだけでも数十件の屋台のような店が連なっています。夕方とはいえ、日本語達者で元気なお母さんと職場帰りの人たちのなごやかな食事風景に、ほのぼのさを感じました。

 今回の訪問は、韓国全農との基本的な立場での一致点を探究し、WTO協定の改定を目ざす国際シンポジウムへの参加を要請することが中心であったため、農村を回っての現地での交流ができませんでしたが、今後の交流に大きな足場を築くものとなりました。

(新聞「農民」1999.12.20/27付)
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1999年12月

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