新聞「農民」
「農民」記事データベース20040531-637-13

産地と直結、地域に根ざす がんばる米屋さん

街で人気 米の調理販売

消費者と田舎を結ぶ役割も

 政府は「米改革」で米流通にかかわる規制を全面的に撤廃。大手米卸と量販店の大型流通が進んでいます。こうしたなか、産地と直結し、地域に根ざしてがんばる街の米屋さん。その取り組みや、農民連への期待など、元気な街の米屋さんの姿を隔週で紹介します。


有限会社おきた 沖田 公成さん(42)

 クラフト製の米袋を持参したお客さんが希望のお米を指定すると、二キロ、三キロなどの袋に合わせてお米を計り、袋代分のサービス券と一緒に手渡します。

 東京都品川区にある『有限会社おきた』は創業八十年の精米店。十四年前に店を継いだ四代目の沖田公成さんは、おにぎりなどの調理販売と紙袋での米の販売をスタートさせました。そして今年、日米連(日本米穀小売商業組合連合会)が主催した優良米穀小売店コンクールで総合食料局長賞を受賞しました。 

 十三年前、米料理の提案として始めた調理販売が人気を呼び、今では十五種類のおにぎりの他、おはぎ、炊き込みご飯、お弁当、おかずなどに広がっています。売り上げの半分近くを占める米飯・惣菜類は、地域のお年寄りに大人気。また、季節の食材や雑穀入りご飯など、健康に良い米料理を実際に食べてもらうことで、若いお母さんたちにも米や雑穀の販売を広げています。

 米は、食べておいしい手ごろな価格で、低農薬などのもの。卸から、あるいは生産者から直接仕入れていて、農民連の準産直のお米も販売しています。こうした地道な努力が信頼につながり、安心で安全、健康なお店としてお客さんに定着しています。

 しかし昨年、一部の大手米卸業者による投機的な米の買い占めで、米屋さんは米が手に入らない事態に。こうした動きに「米屋は米がないと始まらない。相場に左右されない安定した価格で、産地とのつながりを強めたい」と話します。

 五月の連休には、家族と一緒に石川県に行き、米を扱う農民連の牧田孝允さんの田んぼを訪れ交流しました。「これからも休日や夏休みに産地を訪れるようにしたい」と沖田さん。こうして訪れた産地のことをお客さんに話しています。

 「個人の小さな米屋がつながっていく先は、個人の生産者やその集団だと思う。産地が大型化すると、仕入れの特徴が出せなくなる。棚田などの景観を守る農家も生き残ってほしい」と「米改革」の動きを心配します。

 「街のお店も大きなスーパーだけではあじけない。散歩しながら立ち寄れる、楽しみながら買い物ができる商店街も大事。消費者が田舎とつながる。そんな流通に期待しています」と、農民連の準産直の運動にエールを送ります。

(新聞「農民」2004.5.31付)
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