新聞「農民」
「農民」記事データベース20040816-648-05

農民連ふるさとネットワーク結成宣言

関連/ふるさとネットワークで国民へ
  /大地の恵み ふるさと自慢市
  /結成して下さってありがとう
  /初年度の業務計画について(要旨)
  /農民連ふるさとネットワーク結成宣言
  /「農民連ふるさとネットワーク」の結成の意義と役割について


 私たちの原点は、ものをつくり、育てることです

 一九八九年一月の農民連結成時に採択された「農民連行動綱領」は、「農民運動の基本目標を、日本農業の自主的発展と家族労働を基本にした農民経営の安定におく」と述べています。そして、「農民運動の原点はものをつくり育てることです。生産を放棄し、生産をあきらめるとき、農業破壊の政治に怒りをもつことも忘れる」(農民連結成大会への報告)という立場から、「ものをつくってこそ農民」を合言葉に、生産を農民運動の最も中心的な柱として活動してきました。

 さらに同年九月、全国の三十年近くにわたる産直運動の実践の積み重ねのうえに、産直運動全国協議会が結成されました。

 産直協は、「日本人の味覚と胃袋をとりもどす」ことを戦略的課題と位置づけ、「産直」を物の結びつきにとどめず、顔の見える運動として発展させることをめざし奮闘してきました。加入組織の情報交換、学習、技術の交流促進、生育・出荷状況の把握と情報提供、地域にねざした生産技術の収集・普及などに努力してきました。また、地域経済の発展と、それにふさわしい流通の確立に積極的役割を果たしてきました。産直協なしには、生産点での運動を農民運動の中心課題として前進させることはできなかったでしょう。

 以来、私たちは、幾多の困難を乗り越え、安全・安心の農産物の生産を軸に、激増する農産物の輸入とたたかい、広範な消費者との産直や中小流通業者との提携、学校給食や朝市・直売所など、多彩な取り組みを前進させてきました。

 こうした私たちの努力は、多くの人々から共感され、政府や財界のねらいに反して、八割以上の国民が「高くても国内産の農産物がほしい」という世論を形成するうえで、大きな役割を果たしたことはまちがいありません。

 今日、財界いいなりの政治をますます強めている政府は、食糧自給率向上への責任を放棄し、米をはじめとする農産物の関税を大幅に引き下げて輸入を激増させ、多数の農家を生産から締め出し、株式会社が農地まで所有できるようにすることをもくろむに至っています。

 今年からスタートした「米改革」は、「米作りの担い手の育成」の名のもとに多数の農民を生産から締めだすもので、その行きつく先は、米の輸入拡大と大手企業による米流通の支配、米価のさらなる買いたたきになることは明らかです。

 こうした攻撃は、価格暴落による空前の痛みを農民に押しつけ、日本農業に取り返しのつかない打撃をもたらすことになるでしょう。また、農村地域社会の土台を破壊し、国民共通の財産である豊かな国土と自然環境にも重大な影響を及ぼすでしょう。そして、食糧自給率をますます低下させ、主食・米ですら不足する事態を作り出すことは必至です。

 私たちは、多数の国民の願いに背を向けた政治は必ず破綻すると確信します。国民の多数は、国内産の安全・安心できる農産物を希望し、食糧自給率の向上を切望しています。食の安全をめぐる事件が頻発しているいま、その思いはひとしおです。ここに、農政を根本的に転換し、農業と農村を再生・復権させる大局的な展望があります。

 今、農産物を、一部の大企業や商社の金もうけの道具にするのか、それとも、生産者の思いを消費者につなぐネットワークを広げて、日本の食と農を守るのかが問われています。こうしたなかで、私たちは本日、「農民連ふるさとネットワーク」を結成しました。

 私たちは、ものをつくる農民です。政府と財界による農業破壊攻撃を許さないたたかいに全力をあげます。そして、すべての農民に働きかけ、生産を広げるために力をつくします。私たちは、安全・安心を願う多数の国民や、その声に応えるために日夜努力している中小の流通業者、また、日本の農山村を愛し、希望ある日本社会の実現を願う多数の人々と共同し、日本列島三千キロの安全で豊かな農産物を提供するルートをつくるために力を尽くします。

 「農民連ふるさとネットワーク」は次の運動を進めます

 1、農民連ふるさとネットワークは、農産物の輸入とたたかい、食糧自給率の向上をめざして安全・安心・信頼の農産物の生産拡大に全力をあげます。

 2、農業と農村の価値と役割への国民合意を大切にし、都市と農村の連帯、農業と商業の提携を広げる多様な取り組み、住民のネットワークを生かした活力ある地域づくりを進めます。

 3、日本列島三千キロの産地をつないだリレー出荷で、広範な消費者や団体との産直、中小の流通業者、加工業者、市場との提携、学校給食をはじめとした地産地消運動などを強力に進めます。インターネットによる産地情報の提供も進めます。

 4、生産者として、環境を守り、気候や自然条件、科学技術を生かした生産技術の向上に努力します。

 5、これらの運動を通して、農民の労働が報われ、すべての国民が安全で健康的に暮らせる社会の実現に貢献します。

 世界の流れと固く連帯して

 WTO体制のもとで、多国籍企業の一人勝ちと、貧富の差の拡大、世界的な農業危機の進行、飢餓人口の増加という状況が広がっています。これに対し、新しい国際経済秩序と食糧主権の立場に立つ貿易ルールの確立を求める国際的世論もまた、全地球的規模で高まっています。これは、WTO協定改定の展望を切り開くものです。

 また、今年四月に開いた「国際シンポジウム」では、私たちの産直運動が、「資本に対抗するもうひとつの流通」であり、「食糧主権の実現に接近する実践」として、外国代表から大きな注目を集めました。

 食糧自給率がわずか四〇%でありながら、国内生産を破壊して輸入拡大政策を進めている日本で、生産者が協同し、広範な国民との合意、連帯を広げ、安全・安心の農産物を届ける運動は、食糧自給率向上と、日本における食糧主権を確立する運動に大きく貢献するものと確信します。

 ここに私たちは「農民連ふるさとネットワーク」の結成を宣言します。

二〇〇四年八月四日           
農民連ふるさとネットワーク結成総会

(新聞「農民」2004.8.16付)
HOT情報
写真