新聞「農民」
「農民」記事データベース20040920-652-06

産地と直結、地域に根ざす がんばる米屋さん

産地に出向き直接つきあい

客に農家の息吹を提供


農家を前面に押し出した店づくりをする

砂金(いさご)健一さん

東京・台東 「金澤米店」

   「○○さんのお米二キロください」。お客さんが指定した農家の玄米を、その場で精米。アイガモ農法や各種こだわり農法米が並んだ店頭には、農家の名前に続いて品種、産地などの表示と写真、米と農家にまつわる一文が添えられています。

 東京都台東区にある「金澤米店」は創業百年の米穀店。十二年前、中学校の社会科教師の仕事を退職し、奥さんの実家の米屋を継いだ三代目の砂金健一さんは、農家を前面に押し出した店作りを行い、全量を生産者から直接仕入れています。

 お米屋さんの強みである対面販売を生かし、店頭精米が終わるまでの三〜四分ほどの時間で、農家の暮らしぶりや、米作りのこだわりなどを伝え、栽培方法や人柄によって違うお米の食べ比べもすすめます。

 「米の向こうにある農家の姿を伝えることで、お客さんの反応が違ってくる。都会に住む消費者は、お米以外の、農家の息吹が伝わるものも求めている」と健一さん。「作る人から直接話を聞かなければ生産者のことは語れない。産地に出向き、農家とのつきあいのなかで感じたことが、会話を通じて自然にお客さんに伝わる」と、一緒に店を切り盛りしている妻、政美さんと、休みを利用して農家を訪問しています。

 農家から直接届く、お米以外の旬の農産物や昔ながらの農産加工品もこの店の魅力。「ジャガイモある? 去年のキュウリはまだ出てこないの?」とお客さんから声がかかります。

 「自給用に作っている野菜などのおすそわけが意外と武器になる。小さい畑でも、そこで採れるものには新鮮味があり、お米だけでなく、こうした旬の農産物がついてくると、お客さんは喜ぶし、つながりがさらに深まる。農民連のネットワークは、地域の農産物や加工品が魅力」と期待を寄せます。

 「地域のお客さんと、食と農について互いに学びあい、習いあう。そういう場所に米屋はなれる。その時の十分な話題は、生産者と直接ふれあっていないと得られない」と健一さん。

 千葉県の農家の協力を得ながら、お客さんと味噌加工に取り組むなど、農と食にこだわる人と人とのつながりを、地域のなかで広げています。

(新聞「農民」2004.9.20付)
HOT情報
写真