農地改革と食糧主権こそ
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国内外のNGOが一同に集結した5日のデモ行進 |
森林保全の名で農民追い出し
そして今回、もう一つ大きな焦点として浮上した問題があります。「森林保全」を掲げた国際的プロジェクト、REDDによって、熱帯雨林地域に暮らす小農民が、森から追い出される事態が続出している問題です。インドネシアやタイなどの熱帯雨林をもつ発展途上国の政府は、小さいものでも香川県ほど、大きいものでは宮城県ほどの広大な森林を囲い込み、森に住む小農民にわずかな契約金を握らせて、生活の成り立たない場所に移住させています。その後、熱帯雨林を伐採し、焼き払い、「CO2をたくさん吸収する」ユーカリなどを植林しなおす、ということが、REDDのもとで行われています。
REDDは、「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減」とも呼ばれ、まだ国際交渉の途上にある仕組みですが、「森林」の定義や、森が吸収・排出するCO2をどうやって計測するのかという技術的問題、途上国にCO2削減の報償が支払われた後の分配の公正さをどう保つか、など未解決の問題が山積みとなっています。「REDDは、多くのCO2を貯留している熱帯林を焼き払って温暖化を促進するだけでなく、自然を破壊することなく共存している小農民の生活を破壊している」とインドネシアの代表は糾弾しています。
またタイでは、移住先で生きていくことができず、もとの森に戻ろうとした農民を「不法侵入者」として逮捕し、1年以上も投獄するという事件まで起きています。「私たちは森で大もうけしようとは思っていない。昔からしてきたように、ふるさとの森を守りながらその恵みを受け取り、小さな田畑を耕して暮らし続けたいだけなのだ」とのタイの小農民の訴えに、「家族農家の思いは、どの国も同じ」と強い共感を覚えました。
デモのふん装をした筆者(左から2人目)と通訳の寺澤彩さん(その右) |
先進国のCO2削減が重要
REDDのような問題が起こる背景には、いま進められている国際交渉でのゆがみがあります。地球温暖化の責任は、CO2などの温室効果ガスを長年にわたって出し続け、発展してきた先進国にあり、現在なお圧倒的に多くのCO2が先進国から排出されています。温暖化を止めるには、まず先進国が国内で削減することが決定的に重要です。
しかし先進国は国内で排出を削減せずに、途上国が削減したCO2に値段をつけ、炭素クレジットとして買い取るという制度を国際交渉で推し進めようとしています。これでは地球温暖化を止めることはできません。
さらに問題なのは、「安上がりに途上国でCO2を削減する方法」として、REDDやCDM(クリーン開発メカニズム)などの「本当はCO2削減にならない方法」が認められようとしていることです。
REDDを告発するタイの農民代表 |
小規模農家こそ環境の守り手
ビア・カンペシーナは、このような国際交渉での間違った“解決策”でなく、「農地改革と食糧主権こそ地球温暖化の解決策」との提言を発表しました。「小規模農民は食糧や農業、水、森林、生物多様性、環境の守り手である」と高らかに宣言し、持続可能な小規模農業を守る食糧主権こそ「気候の危機」を克服できると呼びかけています。日本で家族農業を発展させることが、世界の温暖化防止につながっているという大きな確信を持つことができたフォーラムでした。