新聞「農民」
「農民」記事データベース20100208-911-03

民主党の農政をどうみるか(2/2)

(大 要)

関連/民主党の農政をどうみるか(1/2)
  /民主党の農政をどうみるか(2/2)


 (ウ)戸別所得補償分の買いたたきは必至

 「所得補償は歓迎だが、補てん分を見込んで卸業者から値下げを求められる危険性がある」(日経1月9日)と報じられており、すでに大手卸は「値下げ」を公言しています。買いたたきに対する「対策を準備しておくことが必要ではないか」という質問に、筒井農水委員長は「大型量販店の価格形成力に問題がないとは思わないが、それに対抗するには直売所や産直を広範に広げ……流通形態を変えることが課題」と、問題をそらし、政権としては何の手も打たないことを公言しています。

 産直など「もう一つの流通」が重要なことはいうまでもなく、私たちはすでに実践しています。しかし、買いたたきを規制すべき政府・与党が問題をそらすのは無責任きわまりないといわなければなりません。さらに、米価が下がった場合に支払われる「変動助成」は1俵1200円といわれていますが、これもまた買いたたきの誘因になりかねません。これでは“農家戸別所得補償”ではなく、大手流通資本の“所得補償”になりかねません。

 (エ)「激変緩和」―本当に転作助成の目減りは避けられるか?

 「シンプルでわかりやすい助成体系」の名のもとに、画一的な助成体系にした結果、転作助成金が激減するという問題が火を吹きました。あわてた政府は、08年の助成金と2010年の助成推定額の差額を地域協議会単位に調べあげて差額を310億円とはじきだし、これを「激変緩和」予算として、とりあえず転作助成の目減りを避けることにしました。

 これで一件落着かに見えたのですが、それほど甘くはありません。

 山田農水副大臣は「激変緩和措置を来年も再来年も、ずっと続けて欲しいという期待もあるようだが、あくまで激変緩和措置だから、国と相談しながら、今回は、慎重に、できるだけ限定的にやっていただきたい」と発言しています(1月21日の記者会見)。

 これは、第一に激変緩和は1年限りの措置であり、来年以降も続く保証はないという意味です。

 第二に、転作助成の差額が無条件に補てんされるわけではなく「限定的」なものにとどまります。

 「限定的」の意味は、(1)「その他作物」(1万円)への助成を減らしたり、飼料作物の単価を減らすなどの「自助努力」によって目減り額を減らすことが大前提、(2)そのうえで、どうしても大幅な減額になる場合に、国の審査を受けたうえで激変緩和枠を使うことができる――という意味です(農水省の「Q&A」による)。すでに宮城県や秋田県などが県独自の予算で目減り分を補てんすることを決めており、こういう動きは全国に波及する見込みです。子ども手当も転作助成も地方負担――これでは「地域主権」の名が泣こうというものです。

 さらに、農水省の担当者は「野菜や果実、花などはいくら増産してもカロリー自給率向上に寄与しない。今回は激変緩和措置をとったが、野菜などに転作助成金を出し続けるのが妥当かどうか、今後検討する」と述べ、「その他作物」への助成そのものを打ち切ることをほのめかしています。

(3)切り刻まれる農林水産予算

 (ア)34年ぶりに2・5兆円以下に

 民主党政権初の予算編成で、農林水産予算総額は34年ぶりに2兆5000億円を下回り、ピーク時の3分の2になりました。1975年の農林水産予算は2兆1767億円で、軍事費の1・6倍でしたが、86年に逆転し、民主党政権下で半分になりました(図2)。最大のムダ、「仕分け」対象である軍事費を聖域にして8年ぶりに増額する一方で、農林水産予算の削減を加速したためです。

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 (イ)何が削られたのか

 戸別所得補償・水田利活用予算の増額分は3694億円。一方、土地改良予算の減額は3643億円(表2)。一部にムダがあったとはいえ、土地改良予算を6割削ってマニフェスト予算を確保したという構図です。そのほか農業共済・鳥獣被害防止対策などを「仕分け」にかけて削り、農水予算全体では1000億円減になりました。

 昔、中国で猿のエサ代をケチろうとして、朝に3つ、夕方に4つエサをやるといったら猿が怒ったので、朝4つ、夕方3つにするといったら大喜びしたという故事(「朝三暮四」)がありますが、鳩山政権の手口はこの程度のものです。しかし、私たちは猿ではない!

 (ウ)農業共済予算が危ない!

 さらに事業仕分けで3分の1縮減を申し渡された農業共済予算については「国庫負担2分の1は法律事項なので今年は乗り切ったが、『仕分け』は生きている。将来的には制度のあり方自体の見直しが必要になる」(農水省)と、改悪をほのめかしています。

 (エ)来年から予算を組めるのか?

 11年度から「モデル事業」ではなく、米以外の作物や漁業も対象に所得補償がスタートし、必要な財源は少なくとも1兆円といわれています。

 今年は土地改良予算を“埋蔵金”のように扱いましたが、残っているのは2129億円。いったい財源はどこから確保するのか? 来年から予算を組めるのか? おおいに疑問だといわなければなりません。

(4)農業再生と自給率向上は農民連の「要求と提言」の方向でこそ

(1)農業危機の根本原因にメスを

 根本原因は(1)政府がWTOいいなりに価格保障制度を根こそぎ廃止したこと、(2)自由化による輸入の激増、(3)大手流通資本による常軌を逸した買いたたきであり、自由化ストップ、買いたたき規制、価格保障と所得補償の組み合わせこそ必要です。

 農民連の「要求と提言」は3つの原因にメスを入れ、(1)およそ4500億円の予算を追加して価格保障を実施、(2)これに生産コストの高い条件不利地域への所得補償を組み合わせる、(3)農産物の輸入自由化をストップし、ミニマム・アクセス米を廃止、(4)「担い手蹴(け)散らし」政策を転換し、若い農家を育てる国家プロジェクトの実施などを要求しています。

(2)農業版「2つの聖域」にメスを

 「価格支持政策は一切やりません」(筒井氏)と強調するなど、民主党はWTOと足並みをそろえて、価格保障を頑強に拒否しています。

 その姿勢は、現実に被害を与えています。昨年11月に16万トンの備蓄米の買い入れ方針を打ち出したものの、価格回復効果を持たせることに断固反対し、安値での買い上げ(民主党政権による買いたたき)を画策したため、1月にやっと4万トンを買い入れたにとどまっています。

 自由化熱中ぶりはすでに見た通りですが、ミニマム・アクセス米輸入でも異常は際立っています。10月に初訪米した赤松農相はミニマム・アクセス米輸入の達成をアメリカ側に誓約し、現実に総選挙翌日の9月1日から1月15日までに53万トン強を輸入しています。外米は買い入れても、国産米は買い入れない!

 WTO・アメリカ言いなりと財界べったりという農業版「2つの聖域」にメスを入れ、転換をはからないかぎり、農業の再生も自給率向上もありえない――民主党は、これを肝に命じるべきです。

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(新聞「農民」2010.2.8付)
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