新聞「農民」
「農民」記事データベース20110516-972-02

東電が賠償しないなら国がやれ
従来の枠にこだわらず米増産策を

農民連、食健連が農水省交渉

関連/農水相あて要請書


画像 農民連と全国食健連は、農水省と交渉を行い、(1)全面的な損害賠償を速やかに実施すること(2)大震災を踏まえた米政策を抜本的に見直すこと―を求めました。(別項)

 農水省食料安全保障課の佐南谷(さなたに)英龍課長は、損害賠償金の仮払いについて「第一義的には東電が払い、緊急性の高いものから行っていく」と答弁。これに対し、福島の酪農家は口々に「毎日牛乳を捨てている。ひと月半、まったく収入が途絶えて、借金がたまっている」「原発から30キロ圏内に住んでいるが、牛にえさをやれずに死んでいる」「東電が賠償しないなら、国がたてかえ払いしろ」などと訴えました。

 「みなさんの怒りはわかるが、原子力損害賠償紛争審査会で判定指針を出すので、それを待ちたい」との課長の答えに、福島県農民連の根本敬事務局長は「なぜこの場で賠償の仮払いをすると明言できないのか。われわれは1日1日生きるか死ぬかで、まさしく緊急性の高い状況にある。ただちに仮払いを行え」と強く求めました。

 参加者は「よくそんなことが言えたもんだ。われわれと福島へ行って暮らしてみろ」と怒りの声をあげていました。

 また、(2)を補足して、農民連ふるさとネットワークの横山昭三事務局次長は「震災による作付け不能面積など農水省が被害実態を把握していないなかで、震災前の過剰を前提に生産目標数量を設定するのは危険だ。減反政策を見直し、米価を安定させる施策をすぐに行え」と強く求めました。

 農水省総合食料局計画課の天羽(あもう)隆課長は「生産目標数量は、日本人が1年間に食べる量を前提に設定している。米価は需給で決まる」と述べ、目標の見直しも米価安定も考えていない姿勢を示しました。

 参加者は「被害実態も作付け可能面積もわからないのに減反目標を変えないというのでは、国民の理解は得られない。従来の枠組みにこだわらない増産策が必要だ」と訴えました。


農水相あて要請書

1、全面的な損害賠償の速やかな実施について

(1)東電に対し、原発事故による放射能漏れによって収入が途絶えたり損害を受けている農家に、生活費として直ちに損害賠償金を仮払いさせること。
(2)損害賠償にあたっては、出荷自粛になっているものや、放射能汚染を原因にしたあらゆる損害、汚染されて作付け不能となっている農地など、全面的に賠償すること。土壌汚染によって作付け不能が長期化する場合は、年次ごとの賠償を行うこと。
(3)原乳の出荷停止や放射能汚染を原因とした、いわゆる風評被害によって出荷できない酪農家に対し、飼料、ワラ、牧草、オガクズなどの供給・援助すること。計画的避難区域に指定された地域では、家畜の避難移動についても万全な対策を講ずること。
(4)放射能汚染された農地の除染を、東電と政府が責任をもって実施するとともに、土壌および作物の放射能汚染を調べる検査体制を福島県などに設置すること。

2、大震災をふまえた米政策の抜本的見直しについて

(1)数字だけそろえても、計画通り米が収穫できる保証がないなかで、生産目標数量の見直しを行い、可能な地域での増産対応を実施すること。あわせて、仮に過剰になっても米価が下がらないよう対策をとること。
(2)被災地の米を昨年産まで敬遠する量販店と米業者に指導を徹底し、消費者に理解を求めるPRを強めること。
(3)塩害克服対策や、放射能汚染された稲のバイオ燃料用向けなどの技術開発と誘導策を実施し、主食米並みの所得を補償すること。
(4)国家的非常時に主食の米をマネーゲームにさらす先物取引の申請は却下すること。

(新聞「農民」2011.5.16付)
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