輸入柑橘類の残留農薬の実態は…
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食品分析センターが調査
国産の20倍〜5倍を検出
私たちのまわりには、季節を問わず様々な輸入食品があふれています。柑橘(かんきつ)類もその一つで、アメリカをはじめとする外国から大量に輸入されています。
スーパーの店頭にならぶ輸入の柑橘類(東京都内) |
今回、農民連食品分析センターは、柑橘類の残留農薬検査を行いました。結果は図1のようになりました。
輸入された柑橘類からは国産の約20〜5倍の残留農薬が検出されました。なぜこんなにも違うのでしょうか。
長期輸送の際に殺菌剤を散布
輸入柑橘類は長期輸送の際に、腐敗やカビを防ぐため殺菌剤が散布されています。これが、ポストハーベスト農薬といわれるものです。輸入品で多く検出されているイマザリルやTBZ、OPPはポストハーベスト農薬の1種です(表1)。収穫後、船積み前に業者によって散布されています。
日本で生産時に使用される農薬は、収穫時に残留しないよう使用されるのに対し、ポストハーベストは輸送中に効果が切れないように、つまりなるべく残留するように使用します。目的の違いが残留値の大きな差となって表れています。
果肉からも残留農薬を検出
柑橘類は皮に覆われています。皮をむいて食べれば農薬の影響はないのでしょうか。食品分析センターは、皮と果肉それぞれのポストハーベストの残留値も調査しました。結果を図2に示します。
表面に散布されたうち、一定量のポストハーベストが果肉にも浸透していることがわかります。たとえば、アメリカ産のオレンジでは残留しているイマザリルの約10%が果肉に浸透しています。「皮をむいたから農薬は残らない」というわけにはいきません。
一方、皮ごと使うことの多いレモンは、ほとんどが皮に残留するなど、種類ごとで傾向が違う結果が出ました。
対象から除外も圧力で二転三転
日本の農薬取締法ではホストハーベストの使用は禁じられており、3種類の農薬は日本では使用していません。当然今回の検査でも国産の柑橘類からは未検出です。ところが輸入向けには、ポストハーベスト農薬を「食品添加物」扱いをすることで、農薬取締法の対象から除外しています。この扱いもアメリカの圧力で二転三転しています。
TPPなどでさらに輸入の圧力が強まるなか、食品の安全性を改めて考える必要があります。
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(新聞「農民」2016.7.25付)