新聞「農民」
「農民」記事データベース20161219-1243-07

輸入粗飼料食べた牛の堆肥で
スイートピーに生育障害

宮崎県農民連が農水省に要請

関連/国は被害調査・防止対策と損害賠償を


 葉が縮れるホルモン障害が発生

 宮崎県都城市で、10月上旬ころから、11月から年末向けに出荷するスイートピーに、葉が縮れる障害が発生しました。都城市の生産者、上原節雄さん(57)は、県の専門家に相談したところ「クロピラリド(日本で登録のない除草剤)によるホルモン障害」と診断され、「活性炭でクロピロイドを吸着する」ことを指導され、活性炭フロワブルの土壌への注入を行いましたが、障害は止まりませんでした。

 上原さんは、20年前から栽培を始め、独自の品種改良を繰り返し、市場で高く評価され、現在1300平方メートルのハウスで、1万3800株を育て、例年11、12月の2カ月だけでも200万円前後の収入を得ていました。

 しかし、この障害によって、今年の収入は見込めない状況です。

 国は05年に障害を確認していた

 宮崎県農民連は、共産党県議団と協力し、宮崎県に対してクロピラリドの被害状況の調査と、農水省への原因究明を要請しました。

 11月16日、共産党の真島省三衆院議員の紹介で、宮崎県の来住一人県議と農民連本部の齋藤敏之常任委員が、農水省の担当者から説明を受けました。

 クロピラリドは、国内では使用されていません。その残留の原因は、その除草剤を使用している外国から入ってくる飼料です。農水省は、2005年に、このクロピラリドが残留した粗飼料を与えた牛ふん堆肥で育てたトマトとミニトマトの生育障害を確認し、地方農政局を通じて各都道府県に「障害の未然防止と被害状況の把握」の協力要請を行いました。

 さらに、農水省は14年3月にも「牛ふん堆肥中のクロピラリドが原因と疑われる園芸作物等の生育障害の発生への対応について」との連絡を、05年同様に行いました。

 県内の今年の被害は、スイートピー3戸、ミニトマト7戸との報告もありました。

 11月25日に、上原さんの農場を視察した、宮崎県連と、真島議員、来住県議に、上原さんは、「11月からの収穫が皆無になり、他の仕事をしながら、来年の準備をしている。わかっていながら何の情報もなく、被害ほ場を見て『やっぱり出たか』と言った県の職員に、被害を補償しろ!と言いたい。今後このようなことが起きないよう、国・県に対策を求めたい」と話しました。

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農場の堆肥を視察しました(都城市)


国は被害調査・防止対策と損害賠償を

 11月16日の説明の際、「なぜ、10年間も被害が出た無登録農薬が残留する粗飼料の輸入を続けたのか」との質問に、農水省は、「飼料安全法3条では、その飼料が原因で家畜の肉や乳などによって人の健康を損なう恐れがあるものが生産され、家畜等に被害が生じることを防止する観点から、製造や保管、表示基準があるが、今回の被害で、輸入禁止措置を執ることはできない」と説明しました。

 しかし、同法3条3項に、基準または規格について「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改正がなされなければならない」と定めるように、制度的に輸入を止めることは可能だと思います。

 被害の実態を全国的に把握し、使用した牛ふんや飼料を徹底的に分析し、科学的数値をもとに、被害防止の対策と、被害農家への損害賠償を要求することが求められています。

(新聞「農民」2016.12.19付)
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