農民連第22回定期大会決議(案)安倍暴走政治とTPP農政ストップ
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「TPP批准は許さない!」とトラクターでデモ=11月15日、都内 |
(2)死に体のTPPにしがみつき、 危険で無責任な暴走にのめり込む安倍政権
安倍政権がこれほどまでにTPPにしがみつく背景にあるのは、何でしょうか?
(1)アベノミクスの行き詰まりを崩壊目前のTPPにしがみついて打開する以外に術がない
第1に、TPP促進は破たんしつつあるアベノミクスの看板政策であり、TPPにしがみつく以外に「成長戦略」を進める術がないからです。暴走は、この政権の「強さ」を表すものではなく、「安倍政治の行き詰まり」、国民との矛盾の深刻さを示しているものにほかなりません。
(2)財界・多国籍企業奉仕の反歴史的な暴走
第2に、「トランプ現象」やイギリスのEU離脱の底流にあるのは、格差と貧困の拡大、国内産業の空洞化などグローバル資本主義の深刻な矛盾です。ところが安倍首相は、11月のTPPとAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議で「保護主義とのたたかい」を呼びかけ、「自由貿易の旗手」を気取って、「TPPの世界化」――TPPをモデルにしたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)やFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)、日・EU間FTA、日中韓FTAなどの大型FTA促進を狙っています。さらに安倍政権は、日本にチーズなど乳製品や豚肉、パスタ、チョコレートなどでTPPを上回る自由化を迫っているEUとの間でFTAの年内「基本合意」をめざして暴走にのめりこんでいます。
こういう安倍政権の暴走は、財界・多国籍企業奉仕の政治そのものであり、世界の流れに逆行するものです。それは、WTOや国際投資協定など、グローバル化を推進する国際交渉・協定がTPPで5連敗目を迎えている世界史的文脈を見ることができない反歴史的な暴走です。
(3)日米FTA――「アメリカ第一主義」の餌食に
トランプ次期大統領の要求は「TPPを離脱し、2国間FTAをめざす」であり、「日本の負担を増やせ」です。「アメリカ第一主義」のトランプ流FTAは、TPPをさらに上回る危険なものになることは必至です。(ア)TPPが発効しなければ、牛肉関税は日豪FTAで19%に下がるのに対し日米間は38%のまま、TPP版SBS(売買同時入札)米の特別枠はゼロになるなど、アメリカは「不利」の状態に陥ります。日米FTA交渉に入れば、アメリカは、この是正を迫るだけでなく、12カ国間交渉のもとで、乳製品や牛肉などの対米輸出国の手前、アメリカが「遠慮」せざるをえなかった農産物の市場開放を、日本に強引に迫ることは必至です。
(イ)ISD(投資家対国家紛争解決)条項とアメリカ企業の追加要求受け入れのための「調整機関」の設置条項を明確に盛り込むよう要求される危険があります。
(ウ)遺伝子組み換え食品の表示義務廃止を含む食の安全、医療・医薬品・保険などに対する規制の撤廃・緩和が公然と迫られることは必至です。
トランプ流「2国間FTA戦略」は日本を最大のターゲットとし、TPPを出発点に、従来の日米構造協議やTPP交渉参加前後の二国間協議などを通じた対日要求の総決算を求める“日米版TPP”の様相を呈するものになることは明らかです。安倍首相は、日米FTA交渉を明確に否定するよう求めた与党議員の質問に対し、拒否を明言するのを避けたうえでTPP可決を強行しましたが、これはアメリカの思う壺(つぼ)にはまる危険で無責任な暴走といわなければなりません。