新聞「農民」
「農民」記事データベース20170116-1246-01

2017年の展望を語る

「立憲デモクラシーの会」呼びかけ人
上智大学教授 中野晃一さん

関連/2017年の展望を語る
  /本の紹介/中野晃一著 つながり、変える・私たちの立憲政治

 2017年がスタートしました。安倍暴走政治を許さず、立憲主義を回復し、個人の尊厳を守る新たな年の幕開けです。「立憲デモクラシーの会」の中心メンバーとして市民運動の先頭にたってきた上智大学教授の中野晃一さんに、16年を振り返ってもらい、今年の展望を語っていただきました。


立憲主義の回復と個人の
尊厳を守る新たな年に

 安倍政権の暴走
  くさび打ち込む市民運動の共同

――昨年はどんな年でしたか。

画像  中野 世界でも日本でも、安倍政権が推し進めるTPPのように、グローバルな規模で少数による寡頭支配を打ち立てようという流れが強まった1年でした。その一方で、とくに日本ではそれに抗して市民の力で立憲民主主義を守ろうという動きも強くなりました。

 安倍政権の暴走という側面と、同時にそれに歯止めをかけ、くさびを打ち込もうとする市民社会の働きかけとがせめぎ合った年でもありまし+た。

 市民の運動の広がりでいえば、2015年から、さまざまな党派、年齢、性別、職業など社会的立場を超えた広範な市民の連帯が安保法制反対のたたかいを軸に展開してきましたが、それが16年は、参議院選挙に代表されるように野党共闘を後押しする形で進められました。

 国会前でのデモや集会などの直接行動が、市民の声を野党にがんばって国会に届けてもらわなければならないという思いと一体となって行われました。

 市民の側は、安保法制など悪法が強行成立させられたらそれで終わりではなく、参議院選挙で野党を後押しする形で、暴走に歯止めをかけようとする力を維持できました。

 とても困難で初めての経験でしたが、その結果、参議院選挙で、非改選とあわせれば与党は3分の2を何とか確保したものの、改選議席では3分の2を取れず、1人区でも3分の2に届きませんでした。野党の共闘は、安倍暴走への一定の歯止めになっていますし、市民が後押しする野党共闘の力が今に至るまで安倍政権に対するけん制になっていると思います。

 昨年の参院選
  自民党の牙城で統一候補が活躍

――いま言われたように昨年の参院選では、32の1人区のうち11で野党統一候補が勝利しました。

 中野 これは本当にすごいことだと思います。地方の選挙区は本来、自民党の牙城で、4年前の参院選で31の1人区で自民党は29を取ったのですから。それが昨年は、市民が後押しをして候補者を一本化して、東北5県、新潟、長野、山梨など東日本を中心にめざましい成果をあげました。

 これには、TPPの問題も大きかったと思われますが、安倍政権の暴走が国民のためになっていないということが実感できるような県で顕著でした。東日本大震災があり、原発事故を経験し、さらにTPPが追い打ちをかけ、反対の公約も守らず、衰退を加速させるだけの自民党に対して、「このままではいけない」と、穏健な保守層も含めて県民が立ち上がり、野党が受け皿をつくったことがこの結果につながったと思います。

画像
「憲法守れ、安倍政権退陣」と開かれた憲法集会=2016年5月3日、都内

 参院選後の国会
  対米追随の道を安倍まっしぐら

――参院選後の国会を含めた情勢をどうみていますか。

 中野 安倍首相は愛国者を自称していますが、政策をみると、TPP、集団的自衛権の行使容認、安保法制、沖縄・辺野古への米軍新基地建設など、対米追随の道をまっしぐらに進んでいます。TPPに関しては、トランプ次期大統領のもとで離脱を表明したアメリカ以上に熱心です。

 これには、アベノミクスが行きづまりを示すもとで、TPPの国会批准をしゃにむに強行し、「TPPで経済成長を促す」という幻想を振りまき続けることが必要だからです。まるで、戦時中の日本政府の大本営発表のようなものです。同じように強行成立させたカジノ解禁推進法も、これで経済成長を図るということ自体がカジノそのもので、ギャンブルをやって負けが込んでもさらに固執しているような、まったく無責任なものです。

 世界の動き
  米欧寡頭政治に市民運動が台頭

――昨年の世界の動きについてもう少し詳しくお聞かせください。

 中野 世界でも寡頭支配が強まり、拡散しており、それに呼応してアメリカでもヨーロッパでも既成政党に対する離反が進んでいます。公約を裏切って、自分たちの声を代表せず、一握りの人たちのための政治しか行われていないことへの不満の表れとして、直接行動が各地で起きています。

 この背景には間接民主主義がうまく機能していないことがあり、99%に対する1%の支配を批判し、ニューヨーク・ウォール街を占拠しようというオキュパイ運動を担った若い世代が大統領選で民主党候補の座を最後まで争ったバーニー・サンダース氏を支持するなどの現象となって現れています。ヨーロッパでも新しい左派政党が支持を伸ばしています。

 一方で、ポピュリズム(大衆迎合主義)とデマゴーグ(扇動政治家)を駆使して、こうした不満を吸収しながら、右派の新興勢力も台頭してきています。トランプ米次期大統領の誕生やヨーロッパの移民排斥問題はまさにそれで、労働者層や中間層の生活不安が強まるなかで、現実から目をそらさせ、すべて移民が悪いという排外主義、復古的ナショナリズム(国家主義)の道を進みつつあるのも事実です。その点、日本でも自公政権や日本維新の会、小池・東京都知事の誕生はその流れにあるとみていいでしょう。

 グローバル寡頭政治の台頭に抗して、市民社会の側もグローバルな連帯でそれに対抗し、抵抗する運動を内外で強めていく必要があります。昨年12月4日に行われたオーストリア大統領選挙では、緑の党の候補が、移民排斥を掲げる右派候補に勝利しました。

市民運動の後押しで野党共同
実現し自公を少数に追い込む

――こうした内外情勢のもとでの今年の展望は?

 中野 今年は、衆議院選挙の可能性が大いにあります。日本には、小選挙区制という非民主的な制度があります。過半数の支持を得なくても、相対的多数で政権が取れます。投票率が低いうえに、野党が分断されていれば、自民党が多数を取ることになってしまいます。

 これに立ち向かうためには、野党が立憲主義の回復、個人の尊厳の擁護を掲げて受け皿をつくり、共同を広げることが重要です。そして、政治をあきらめている人たちにも投票に行ってもらうことが大切です。参議院選挙で築いた成果を踏まえて、共闘のためにどれだけ連帯を広げることができるか。新しい人々が自分たちの生活、安全、権利を守るために声をあげて運動に参加してもらうことが求められています。

 さらに、市民が運動の後押しをして、「総がかり行動」や「シールズ」などのように緩衝材や接着剤の役割を果たしながら、衆議院選挙で野党共闘を実現し、自公を少数に追い込んで、まずは安倍政権を退陣させることだと思います。その可能性は大いにあり、みなさんと力を合わせてがんばりたいと思います。

 農民連へ期待
  参院選の成果に確信もち運動を

――最後に、農民連に対する期待をお願いします。

 中野 農家にとって、政治は生活に根ざし、直結しています。勤め人に比べて、それははっきりしています。生活を壊されて、立憲主義の原則が侵されているときに、土地・生活に根ざして政治を変えることは生きていくために必要なことだと思います。

 日本の農家は、TPPのたたかいを通じて、安倍政権が掲げる「風穴を開ける」「成長産業」などという「改革のレトリック」の矛盾を肌身で感じています。

 地方でがんばる人々が将来のためにも大きな声をあげて、流れを変えていくことが求められます。昨年の参院選はそんな指針を与えてくれました。そこに確信をもって運動していってほしいですね。ご一緒にがんばりましょう。

 (3面に中野教授の著書を紹介しています)

(新聞「農民」2017.1.16付)