新聞「農民」
「農民」記事データベース20170403-1257-02

原発事故の責任明らかにし、
原発ゼロめざす

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発事故被害弁護団
馬奈木(まなぎ)厳太郎(いずたろう)さんに聞く


放射能も原発もない福島に「原状回復」を

画像  「生業訴訟」弁護団事務局長の馬奈木厳太郎弁護士に、「生業訴訟」の意義やポイントについて話を聞きました。

 「生業訴訟」は、国と東電に対し、原発事故の責任を認め、「原状回復」(=線量を事故前の水準にせよ)と、「慰謝料」(=原状回復されるまでの間、月額5万円)の支払いを求めて、2013年3月11日に800人が提訴(第1次)した集団訴訟です。14年9月の第4次提訴まで含めて、県内59の全市町村から約4000人が原告となっており、全国で約30あるといわれる福島原発事故をめぐる集団訴訟のなかでも最大の裁判です。

 生業訴訟の目的は3つあります。

 一つは「原状回復」です。これは単に原発事故前に戻せというだけでなく、放射能もない、原発におびえることもない地域をつくろうということであり、この裁判の最も基本的な要求です。これだけ多くの人が原告になったのも、原状回復を大きく掲げたことへの共感からだと思います。

 目的の二つ目は、あらゆる原発事故被害者を救済するという「全体救済」です。原発事故の被害者は原告にとどまりません。分断を乗り越え、一緒になってたたかって、すべての被害者を救済する制度、法律をつくらせる必要があります。

 そして三つ目が脱原発です。こんな被害を二度と出さないためにも、エネルギー政策の転換が必要です。

 裁判では、「東電と国の過失責任を認めるかどうか」という責任論と、「賠償が妥当か」という被害・損害論が争点になっています。現在のように加害者が賠償基準を決めるなどということは、本来ありえないことです。私たちは「年間20ミリシーベルト以下の放射線被ばくは何らの権利侵害にも当たらない。がまんしろ」という国・東電の基準を変えることも求めています。

 私たちはこの裁判を、主権者としての尊厳を回復するたたかいだと思っています。今の福島を次の世代に渡さなければならないおとなの一人として、泣き寝入りしないで声をあげ続ける。それが脱原発につながる「被害者では終わらない」たたかいなのだと思います。

(新聞「農民」2017.4.3付)
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