新聞「農民」
「農民」記事データベース20170417-1259-15

農業と福祉が連携して
中山間地の活性化図る

「百姓百品グループ」
―愛媛県西予市(旧野村町)

 愛媛県西部の中山間地で、四国カルストを源とした豊かな水と土壌に恵まれた西予市。旧野村町にある「百姓百品グループ」(愛媛県農民連加盟)は、農業を柱に福祉事業などと連携して、地域が抱えるさまざまな課題の解決に取り組み、町の活性化に貢献しています。


障がい者の経済的自立
農作業で“働きたい”願い実現

 3つの事業体が相互に連携して

画像  グループは、3つの事業体から成り立ち、相互に連携しています。農産物直売所「百姓百品」は、1998年に高齢者、女性など小規模農家の営農対策のために農家140人が産直組合として設立し、2005年に株式会社化されました。

 今では、平均年齢70歳以上で500人を超える高齢者の知恵と経験、技を結集し、旧野村町の直売所のほか、松山市内にある、えひめ生協の3店舗で農作物の産直を行っています。

 2つめの農業生産法人「百姓百品村」は07年に発足し、耕作放棄地の受託などで8ヘクタールを耕作しています。標高差300メートル、山間地域の40カ所に点在するほ場で主に青ネギ生産を行い、外食産業や青果市場に出荷しています。

農業生産法人の作業の80%を
「福祉園」が積極的に請け負う

 大変な作業でも「役に立ちたい」

 直売所の近隣にある「野村福祉園」(レインボーアグリ)は3つめの事業体で13年にスタート。障がい者の経済的自立という福祉の課題を農業と組み合わせることで、「働きたい」「誰かの役に立ちたい」という願いの実現をめざしています。

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「軽トラ市」開催など直売所は地域住民の憩いの場に

 5分もそこに留まっていると目が痛くなってくる作業所でネギの皮むきを手作業で熱心に取り組む宇都宮三月さん(65)と二宮小百合さん(53)は「きれいにむくのは大変ですが、みんなでやっていると楽しいです」と口をそろえます。

 さらに別の作業所では機械を使って手際よく大量のネギをさばいていきます。「休憩時間におしゃべりをしたりしてみんなと仲良くできるところがいいですね。やりがいがあります」。河本多恵子さん(63)は忙しい手を休めて話してくれました。

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熱心にネギの皮むき作業をしています

仲良く楽しくおしゃべり
みんなで作業 やりがいに

 土に触れ汗かく 安らぎと癒し

 農作業も福祉園の重要な仕事。「マルチを張って、ネギを植えるのは大変。でも、ネギが大きくなって、みんなに食べてもらって、『おいしいね』と言ってくれるのがうれしいです」と話すのは、兵頭華さん(36)。同じ障害をもつ仲間とともに農作業に力が入ります。「ネギ以外にもピーマンやトマトにも挑戦してみたい」と意欲的です。

 土に触れ、風や日光を肌で感じ、汗をかくことで人としての安らぎと癒しを味わえ、爽快感が得られるという農作業の効果が期待されています。

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ネギの苗木を1つ1つていねいに植えていきます

 自然の恵みと宝 都市と農村結ぶ

 福祉園は、百姓百品村の農作業の80%を請け負うなど、農福連携を実践し、効果をあげています。目標は、働くことで障害のあるメンバーの自立とくらしを支えること。当面は、障害者年金とあわせて社会生活ができる工賃、1人につき月額5万円以上をめざし、農業の担い手として地域の人たちとともに農業の振興と活性化を図ります。

 グループでは、若い職員を先頭に、流通の大きな流れもにらみながら、東京や大阪などに足を運んで果敢に商談に挑み、野村の農産物をアピールしています。

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土を耕しマルチを張って

 百姓百品グループの和氣數男代表取締役は胸を張ります。「農作業には多様な工程があり、だれでもできることがあります。百姓百品の農産物は、町の人々と、豊富な知恵と技をもつ百姓たちによって生み出されています。これは、自然の豊かな恵みがもたらす資源であり、地域の活性化を図り、都市と農村を結ぶ宝です」

(新聞「農民」2017.4.17付)
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