新聞「農民」
「農民」記事データベース20170424-1260-03

主要農作物種子法廃止の
暴挙に強く抗議する

2017年4月14日
農民運動全国連合会事務局長 吉川利明


 一、4月14日、自民党、公明党、維新の会などは、わずかな審議時間で、種子法(主要農作物種子法)廃止法を成立させた。

 農民連は、多国籍企業の横暴を規制し、持続可能な家族農業経営の権利確保をめざす国連人権委員会の議論に逆行した種子法の廃止に強く抗議する。

 一、政府は、廃止の理由として、「民間企業が開発した品種で、奨励品種に指定された品種はない」「民間企業が開発した品種よりも安く提供」しているから「都道府県と民間企業では、競争条件が同等とはなっていない」ことをあげている。

 しかし、種子法は、国や都道府県の種子に対する公的役割を明確にした世界に誇るべきものである。同法のもとで、稲・麦・大豆の原種・原原種の生産、優良品種(奨励品種)指定のための検査などを義務付けることにより、都道府県と農業協同組合が協力し、地域にあった優良銘柄を多く開発し、安価に販売するなど、農民の生産・販売活動に大きな役割を果たしてきた。

 種子法廃止法には、「種子の品質や流通を確保するため『種苗法』に基づき、主要作物の種子の生産などについて基準を定め運用する」との付帯決議が加えられた。

 しかし、そのことによって種子法の役割を担保することはできない。

 「種苗法」は、1991年の「植物の新品種保護に関する国際条約」(UPOV=ユポフ=91)の「改正」に沿って、2011年5月に「改悪」され、「育成権者」が登録した種子で生産したものを、農民が「種子としての販売または無料配布」することを禁止し、農民が持つ「種子を自ら採取する権利」を奪った。

 種苗法の改悪に加えた種子法の廃止は、進化のタイムカプセルであり、地域の共有財産である「種子」を多国籍アグリビジネスに売り渡すものにほかならない。

 その結果、もたらされるのは種子の独占であり、農民に法外に高い種子を売りつけることにほかならない。

 一、これまで農民は全国各地の気象や土壌、風土のなかで、多種多様な農産物を祖先から受け継いできた。

 今までの種子法に基づいた都道府県のとりくみが後退することがないよう予算措置等の確保を政府に強く要求する。

 あわせて、国連人権委員会理事会で議論が進む国連「農民と農村で働く人々の権利についての宣言案」でも明確に示されている「種子の権利」を国内でも保障するよう政府に求める。

 この「種子の権利」が明らかにする「将来の食糧確保」のために、われわれは、農業多様性を含む遺伝資源の多様性を守り、農民が自家採取し、自らが提供・交換・販売する自由を求める国際世論と合流し、日本各地に残る在来種の保存・育成に全力をあげる決意である。

(新聞「農民」2017.4.24付)
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