新聞「農民」
「農民」記事データベース20170501-1261-03

日米経済対話

日米FTAの危険浮き彫りに

関連/日米経済協議に異議あり! 官邸前で市民がアクション


 「頭隠して尻隠さず」。悪事の一部を隠して、全部を隠したつもりでいる愚かさを笑う――日米経済対話における安倍政権の対応を見ていて、こんなことわざが思い浮かびます。

 4月18日、麻生副総理とペンス米副大統領の第1回「経済対話」が開かれました。対話では、日米FTA(自由貿易協定)交渉の開始が明確に合意されなかったものの、米通商代表部(USTR)代表が正式に就任する5月以降に「日米FTAのカードを切ってくる可能性がある」(経済官庁幹部)と指摘されています。

 輸出拡大ねらうトランプ政権

 安倍首相は2月の日米首脳会談で、何を言い出すか分からない「トランプ大統領はずし」をねらって、麻生・ペンス対話の枠組みを提案。テーマも(1)財政・金融政策、(2)インフラ、エネルギーなどの分野別協力、(3)貿易問題の順番にすることが合意されていました。安倍政権の狙いは、分野別協力を前面に打ち出すことによって、トランプ氏が問題視する対日貿易赤字から目をそらさせることにありました。

 しかし、こんな“猫だまし”が通用するはずがなく、対話直前に、アメリカは貿易問題を最優先課題にすることを逆提案。発表された文書では、貿易問題がトップに置かれました。

 経済対話と、これに並行して行われた世耕経産相とロス米商務長官の会談、トランプ政権の閣僚の発言から浮き彫りになるのは、日本を標的にした2国間交渉で自国の「利益第一」を目指し、牛肉や米、自動車などの輸出拡大をねらうトランプ政権の姿勢です(表)。

 「日米主導でアジア・太平洋地域の貿易・投資ルールをつくる」と、TPPベースの提案をした麻生氏に対し、ペンス氏は「TPPは過去のものだ。2国間交渉は米国の国益だ。米企業が高いレベルの市場アクセスを享受できるようにする必要がある。将来的に経済対話がFTAに発展する可能性がある」と反撃。さらにペンス氏は、財界人を前に「米国は日本市場の障壁を解消し、より強固で均衡のとれた2国間の貿易関係を求めている」と述べました。

 貿易を担当するロス商務長官はもっとアケスケです。日米FTAの可能性を問われて「何らかの協定の形にしたい」と述べ、日本がTPP交渉でアメリカの農産物の関税引き下げを約束したことを念頭に、「出されたカードは有効だ。TPPは終わったが、撤回させるつもりはない」と踏み込み、「TPPを越える日米FTAはありえない」という自民党の腰抜けの主張をあざ笑いました。

 自主的経済関係の確立こそ重要

 安倍首相は国会で、日米FTAが「国益になるなら進める。ならないなら交渉を進めない」と大見えを切りましたが、TPP交渉でも、過去の日米協議でも、国益に反することばかりやってきたのが自民党政権です。寝首をかくことをねらっているアメリカと、いつまで“同床異夢”を続けるのか。

 TPP批准を撤回し、アメリカいいなりではない自主的経済関係の確立こそ重要です。


日米経済協議に異議あり!
官邸前で市民がアクション

 「TPPを発効させない!全国共同行動」は4月18日、「日米経済協議に異議あり!官邸前アクション」を行いました。

 農民連の吉川利明事務局長もマイクを握り、「アメリカの農業団体は輸出拡大の圧力を強めている。米通商代表部(USTR)次期代表のライトハイザー氏は『農業分野の市場拡大は日本が第一の標的』と明言しており、TPP反対で一緒に運動してきた皆さんとの共同をこれまで以上に強めていきたい」と決意を語りました。

(新聞「農民」2017.5.1付)
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