新聞「農民」
「農民」記事データベース20170501-1261-06

「共謀罪」法案の問題点は

中野和子弁護士に聞く

 「共謀罪」法案の衆議院での審議入りを与党が強行しました。同法の問題点を、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」事務局長を務めた中野和子弁護士に聞きました。


一般市民の日常生活が
取り締まりの対象に

 犯罪実行のため準備行為も罪に

画像  「共謀罪」法案は正式には、「組織的犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(組織犯罪処罰法)の「改正案」といいます。もともと暴力団など団体による殺人等の処罰やマネーロンダリング(資金洗浄)対策目的の法律に、共謀罪について定めた「6条の2」を新設するものです。

 「6条の2」には、(1)テロリズム集団その他の組織的犯罪集団の団体の活動として、(2)当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、(3)その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われただけで刑に処することを定めています。

 警察の判断で取り締まり対象

 ここでいう「組織的犯罪集団」という定義自体、極めて不明確です。政府は、「改正法」の別表などで対象となる277の罪を示しました。

 そのなかには、強盗、誘拐など刑法上の罪をはじめ、森林法(保安林内でキノコを盗む)などさまざまな法律があります。

 法務省によれば、団体のうち「結合関係の基礎としての共同の目的」が277の犯罪を実行することにあればよく、戦争法の発動や9条改憲を「阻止」(威力業務妨害罪)するデモなどが対象となるおそれがあり、市民団体や政党もしくはそこに所属する個人が常時監視の対象となり、こうした運動を“一網打尽”に弾圧しようというのです。

 さらに、「共謀罪」は、犯罪を実行しなくても「2人以上で話し合い計画」しただけで、あとは下見などの「実行準備行為」があれば処罰できるというのですが、下見か花見かわからないというように、何が「実行準備行為」とされるのか明確ではありません。警察が、「実行準備行為」だと判断してしまえば、逮捕できることになります。

「テロ対策」は口実にすぎない

 「テロ準備罪」と言い換えても

 政府は、テロ対策として「国際組織犯罪防止条約」(パレルモ条約)を締結するために、「共謀罪」が必要だといいます。

 しかし、この条約は国際マフィア対策を目的としており、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため、重大な犯罪を行うことを目的として一体として行動する団体に限定しています。条約には「テロ」とか「テロリスト」という言葉はありません。安倍政権は、法案を「テロ等準備罪」と言い換えていますが、「テロ」対策は口実にすぎないのです。

 共謀罪の対象様々な分野に

 「共謀罪」の対象は様々な分野に及びます。

 277の罪のなかには、所得税法、消費税法、法人税法など税金関係も対象になっており、たとえば、税金相談に乗り、「農家経営の安定のために」という共同の目的で結合している団体の場合、「今年の収入をどう算定するか、かかった経費をどのように申告すべきか」などを話し合えば、「計画した」と判断され、「共謀罪」に問われる可能性があります。

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共謀罪に抗議の声をあげる人々=4月6日、国会前

 他に、種苗法に基づく育成者権の侵害、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種の捕獲なども対象になっています。

 安倍政権の狙い暴露し廃案に

 今後、「共謀罪」法案に反対していくうえで大事なのは、何がその対象になるのかを、国会での論戦と結んで、私たちもよく研究し、学習しなければなりません。

 安倍政権が進める「戦争する国づくり」への狙いを暴露しながら、一般市民の日常のくらしでも対象になることを明らかにし、国民的な運動で廃案に追い込みましょう。

(新聞「農民」2017.5.1付)
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