新聞「農民」
「農民」記事データベース20170515-1262-01

安倍政権と東京電力の
福島切り捨てを許さない!

 農民連本部と福島県農民連は4月26日、都内で「安倍政権と東京電力の福島切り捨てを許さない! 政府・東電への要求行動」に取り組みました。福島からはバス3台を連ね、約100人が参加しました。


福島県農民連 政府・東電に要求行動

福島の現実を見に来い

 午前は、官邸前で“福島切り捨てを許さない”怒りの行動。県農民連の根本敬会長は「6年前の今日は初めて東電前で抗議行動を繰り広げた日であり、31年前にチェルノブイリ原発事故が起こった日だ。歴史に向き合うとはたたかい伝えること。われわれは被災者では終わらない。次の世代への責任を果たそう」と訴えました。

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首相官邸前で怒りのコールをする参加者

 農民連の笹渡義夫会長は、「多くの被災者はもがき苦しんでいるが、政府と東電は加害者責任を放棄して被災者を切り捨てようとしている。道理はわれわれにある。あきらめずにたたかおう」と呼びかけました。

 福島の生産者は2人が発言。川俣町から来た斎藤憲雄さんは、「牛のえさを変えたら30頭のうち12頭が死んだ。東電は責任をとれ」と述べ、須賀川市の樽川和也さんは、官邸に向かって、「おい、安倍(首相)。農業者にこれ以上の負担をかけるな。農地を元に戻せ。農業の現実を見に福島に来い」と怒りの声をあげました。

 日本共産党の岩渕友参院議員が連帯あいさつを行いました。


政府各省庁、東電本社と交渉

損害賠償を打ち切るな

現実を直視し、農民の声を聞け

 午後には福島県農民連と関係各省庁、東京電力本社との交渉が行われました。

 前大臣の発言は県民をぼうとく

 福島県農民連は交渉の冒頭で、26日に辞任に追い込まれた今村雅弘前復興大臣に対する安倍首相の任命責任を追及。前大臣は自主避難している人々に対し「帰らないのは自己責任」、「ふるさとを捨てるのは簡単」との暴言を発し、さらに1カ月もたたぬうちに「まだ東北のほうだったからよかった」などと発言して、前日の夜に事実上、更迭されました。

 ところが復興庁の担当者は、「報道のとおり今村大臣は辞任することになった。これ以上言うことはない」と軽い調子で回答。参加者から「福島県民は本当に怒っている。復興庁の職員としての危機感をまったく感じない」「一職員として一連の大臣発言をどう受け止めているのか」などの怒りの声が噴出。「大臣一人の資質の問題ではない。政府として福島切り捨ての方針があるから、あの大臣発言になるのだ」「職員は福島の現場に来て、現実に基づいた政策をしてほしい」と重ねて要求しました。

 営農と暮らしに欠かせない要求

 交渉では(1)2018年以降もこれまで同様に、被害がある限り賠償を継続すること、(2)実測によるほ場一筆ごとの土壌汚染マップの作成、(3)資源エネルギー作物への政策的支援、(4)放射能汚染された農地への賠償、(5)米の全袋検査の継続、(6)牧草地の放射能汚染が原因で飼料変更を余儀なくされた酪農家で、乳牛の死亡が続出している損害への即時賠償、(7)放射性物質による土壌汚染対策の法制度の拡充と実施、などを求めました。

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「政府・東電は福島の現実に向き合え」と迫る農家

 賠償案見直しは必要ないのに…

 農林業の営業損害の賠償をめぐっては、東電は当初、「2018年以降の損害賠償は2倍相当額を一括で支払い、19年以降は相当因果関係のある被害に個別に対応」という賠償案を示していましたが、農協をはじめ被害者からの猛反発を受けて、昨年12月に見直し案を発表。現在は、避難指示区域内は「3年分を一括賠償する」、区域外は「17年分のみ実際に生じた損失を支払う従来の方法を継続し、18年以降は17年中に改めて決める」となっています。

 参加者からは、「2倍一括払いが先に実施された商工業の賠償では、実際には賠償切り捨てが相次いでいる。農業も同様に切り捨てるつもりではないのか」、「被害はいまだに続いており、区域内外に関わらず、損害のある限り賠償を続けるべきだ」と強く要求。しかし、経産省、東電ともに「まだ検討中」と言うだけで、まともな回答を拒否する姿勢に終始しました。参加者は重ねて「農業者の意見は誰から聞いているのか? 賠償案を作る段階でその協議の場に農民連も加えてほしい。被害当事者の声を聞くべきだ」と要求しました。

酪農の死亡牛への賠償

「東電と経産省は現実を見て対応を」

農水省

 (2)農地一筆ごとの土壌汚染マップの作成と農家の健康対策は、事故直後からずっと要求し続けてきた内容ですが、農水省の担当者は初めて聞いたかのような調子で実測調査を拒否。福島県農民連は、あらためて農水省が発表した飛行機で測定した1キロごとの汚染マップと、福島県農民連の実測データには大きなかい離があることを説明し、「JAでもデータを蓄積しており、JAや農民連と国で協力して、一緒に汚染マップを作成しましょう」と、訴えました。

 死亡牛賠償でも訴え

 また、(7)酪農での死亡牛への賠償も、昨年4月からずっと要求し続けている案件ですが、経産省と東電は今回も「まだ獣医に相当因果関係を調査中」などと不誠実な回答に終始していました。

 ところが、農水省の畜産担当者は「原発事故が起きて、購入飼料に切り替えざるをえなくなり、その結果、乳量が落ちて、死ぬ牛も出た。これが現実だ。この現実に起きたことを見れば、エサや死亡との因果関係は分からなくても、原発事故との因果関係を完全に否定するのは難しいのではないか。東電や経産省は、牛の複雑な生理や疾病発生の可能性をよく理解して対応してほしい」と述べ、会場から「そうだ!」との声とともに大きな拍手がわきました。

 交渉には、日本共産党の畠山和也衆院議員、岩渕友、紙智子両参院議員、自由党の山本太郎参院議員のほか、民進党の増子輝彦参院議員の秘書が同席しました。

(新聞「農民」2017.5.15付)
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