新聞「農民」
「農民」記事データベース20170703-1269-01

農水省が超多収米と持ち上げる
民間開発品種「みつひかり」

その実態は……

関連/2年で作付けをやめた

 主要農作物種子法(種子法)が先の通常国会で廃止されました。農水省は、廃止の理由を「民間の種子開発企業の参入を阻害しているため」と説明。一方で、民間開発品種の推奨に躍起になっています。その代表格が三井化学アグロ株式会社の開発した「みつひかり」。しかし、その栽培の実態は……。


種子価格20キロ8万円
都道府県開発品種の10倍

 農業白書で紹介

 「みつひかり」は、ハイブリッド(F1、一代限り)品種で、都道府県の奨励品種には指定されていませんが、2016年では産地品種銘柄としては19県で栽培されています。

画像
三井化学アグロのホームページ

 農水省は、2016年版農業白書で、「みつひかりは多収で、刈取りが遅くなっても米の品質低下がほとんどないため、大規模生産者の作業ピークを分散できます。また、米粒が割れにくく大手牛丼チェーン等、業務用ニーズがある」と持ち上げています。

種子法廃止で外資参入に道

 種子ビジネスに

 もともと種子法の廃止は、規制改革推進会議からでたもの。そのねらいは、アグリビジネスの利益のために、植物遺伝資源を囲い込む種子事業の民営化、農民の種子を特許種子に置き換え、外資参入に道を開くことにあります。

 農水省が昨年9月に同会議に提出した資料によれば、「みつひかり」の種子の販売価格は20キロ8万円。都道府県が開発した品種の約10倍です。生産実績も4414トンと、全主食用米の実績の0・1%以下です。

 農水省は、「みつひかり」が法外に高いことについて、「都道府県が開発した品種は、民間企業が開発した品種よりも安く提供することが可能」だとし、「平等に競争できる環境を整備する」としています。

 2年連続で減少

  「みつひかり」の作付面積は、1996年の試験販売開始から、年によって上下はあるものの、2014年(1650ヘクタール)までは右肩上がりに伸ばしてきました。しかし、それでも主食用米の全作付面積の0・1%以下。しかも、14年をピークに15、16年は減少しています(図)。三井化学アグロ社は、その理由として「米価下落」と「飼料稲の作付け増」をあげています。

 また、三井化学アグロ社の資料によれば、「大規模法人での取り組み事例」として、「収量が多く安定している」などの長所をあげつつも、「育苗に神経を使う」「コンバインが消耗、大型でないとダメ」「(心白が多いなど)品種特性で1等にならない」などの短所も示しています。


2年で作付けをやめた

岡山県農民連 坪井貞夫さん

 10年前になりますが、私は「みつひかり」という民間の種子を、古い付き合いの業者から頼まれて2年間、作付けしたことがあります。

 まず驚いたのは種子代の高さ。通常の米の10倍ぐらいはしました。

肥料は通常の1.5倍
実る頃には倒伏も

 「生産されたコメは、アケボノ(岡山県南の米)並みに買います」「1反(10アール)当たり13俵は取れます」ということで1ヘクタール植え付けました。しかし、1年目は8俵半しか取れず、業者から「13俵取ろうと思えば、肥料を通常稲の1・3倍から1・5倍を施さないとダメだ」と言われ、2年目は、約1・2倍の肥料をやりました。

 稲の姿は、葦(よし)のように太く、硬く、背丈は1メートル70〜80センチもあり、見事な姿でした。ところが刈り取り直前に、台風の影響もあり、倒伏してしまいました。

 稲は青いときと大違いで、実る頃は茎が柔らかく、実際に稲の本根からぺちゃんこに倒れ、コンバインも使えず、半分以上火をつけて始末しました。

 それで「みつひかり」の栽培はやめました。今まで取り扱っていた卸業者が撤退したと聞きます。これでは奨励品種にできないなと思いました。

(新聞「農民」2017.7.3付)