新聞「農民」
「農民」記事データベース20170703-1269-09

地域の話題
あれこれ

岩手
岡田現三


「多面的機能支払交付金」を活用
下鹿妻環境保全会が奮闘

 田植えからそろそろ1カ月。活着したイネの緑が濃くなってくる季節です。これに負けず劣らず元気なのが、水路や畦畔の雑草です。その勢いに、多くの農家が「早く刈らないと…」と焦りを募らせています。「その悩み、みんなで解決しよう」と、盛岡市南部の下鹿妻(しもかづま)地域で「下鹿妻環境保全会」(以下、保全会)が奮闘しています。

 土地改良区も手が回らない

 下鹿妻は盛岡市郊外の水田地帯。中心を流れる農業用水の鹿妻堰(ぜき)は、管理をしている土地改良区も手が回らず、これまではのり面の草刈りなどが十分に行われていませんでした。また、「細かな水路は地域で自主的に草刈りをしていたけど、『ただ苦労ばかりだ』ってみんなぼやいていた」と、保全会事務局長の小笠原憲公(のりゆき)さん(盛岡農民組合組合長)は語ります。

 そこで話題になったのが、国による「多面的機能支払交付金」制度です。例えば田んぼの周りの草刈りを共同で行うと水田面積10アールあたり3000円が交付されるというもの。この共同活動組織として、地域のほとんどの農家65人が参加して、保全会を2016年3月に発足しました。

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U字溝を新設しました

 発足して1年。5回の草刈りのほか、水路の泥上げなどを行いました。共同作業にはいつもたくさんのメンバーが参加します。80代の方も含め、それぞれが役割を果たしています。「ずっと気になってた鹿妻堰がきれいになった」「これまでタダ働きだった、家の前の水路の草刈りでも日当が出た」など次々と喜びの声が上がっています。

厄介な草刈り・泥あげなど
みんなで力出し合って解決

 調査して回ると作業計画埋まる

 草刈りだけではありません。「多面的機能支払交付金」は地域の農地・農業環境を守る作業は個人の農地も含めてすべて対象。改めて地域の様子を調査して回ると、次々に作業の計画が埋まっていきます。荒れて草だらけになったハウスの中も整理しました。設備に投資しても続けられなかった無念さが伝わってきます。同時に、整理することで次の展望をさぐるスタートに立つことができました。

 田んぼにおおいかぶさった松の伐採もしました。田んぼの地主さんからの依頼がきっかけです。作業を終えてみると、松の木の地主さんからも「実はずっと気にかかっていたが、高齢のため手をかけられないでいた」と感謝されました。水路へのU字溝の設置など、これまで個人ではできなかったことも、次々に解決しています。

 作業を終えて達成感を共有

 一年間の作業を終えて開かれる懇親会(飲み会)。達成感があるだけに盛り上がります。「年も年だから、そろそろ誰かに頼みたい」「うちでは、機械を新たに買うのはムリ」…悩みも率直に出されます。

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下鹿妻環境保全会のメンバー

 まもなく今年1回目の共同草刈り作業。次世代へ夢をつなぐ取り組みは一歩一歩進んでいます。

(新聞「農民」2017.7.3付)
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