新聞「農民」
「農民」記事データベース20170814-1275-01

成長し続ける国際農民運動

ビア・カンペシーナ国際総会開く


新自由主義の農と食の
支配に立ち向かう

 フランスとスペインを分けるピレネー山脈の両側に、フランス語とも、スペイン語とも全く異なる言語「バスク語」を話す人々が独自の文化を守りながら暮らしています。この地の最大都市ビルバオ(スペイン・バスク州)で7月16日から24日まで、農民連が加盟する国際農民運動組織「ビア・カンペシーナ」が国際総会を開催しました。

 4年に一度開かれる最高意思決定の場である国際総会には、世界から800人を超える人々が参加。農民連から4人の代表が出席しました。世界の農民のたたかいが合流する場となった国際総会は、確信、連帯感、希望に満ち、新自由主義や多国籍企業による農と食の支配に立ち向かう決意を固める場となりました。

政治動かした自信を力に
さらなる前進へ

 自信に満ちた会議

 「われわれのたたかいが食料と農業、農村についての国際・国内の議論のあり方そのものを変えた」。国際総会が採択したバスク宣言は、こう胸を張りました。ビア・カンペシーナのたたかいは、食糧主権、家族農業、アグロエコロジー(生態系に配慮し、農薬や化学肥料への依存を減らす農業)、農地改革の重要性を国連機関や多くの政府に受け入れさせてきました。国連人権理事会は、ビア・カンペシーナが提案した「小農民の権利宣言」の成立に向け、審議を続けています。

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総会参加者とともに食糧主権の実現を求め、ビルバオ市内を行進する農民連代表団。この日のデモには1600人が参加(7月23日)

 国連食糧農業機関(FAO)のダ・シルバ事務局長も、ビデオメッセージの中で、「私たちは、協力して、農業、社会、環境政策論議の中心に家族農業を再び据えた」と述べ、ビア・カンペシーナの役割を評価しました。

 自らのたたかいが政治を実際に動かしていることを総会参加者の多くが確信し、さらなる前進を決意しました。

 資源収奪、平和脅かす右派政権に警鐘

 総会は一方で、こうした流れに逆行する形で、多国籍企業が、土地や水、種子など農業に必要な資源の収奪を強めていることを非難。さらに、農業の礎である平和を脅かし、戦争・紛争をあおる右派政権の台頭に対しても警鐘を鳴らしました。新自由主義がもたらす貧困や格差拡大を利用し、移民などへの憎しみをあおるアメリカのトランプ政権や各国の政府についても懸念が相次ぎました。

 ビア・カンペシーナの創始者の一人、バスク州のポール・ニコルソン氏は「憎しみと外国人排斥に抵抗しなければならない」と述べ、連帯の精神で問題の根源に対処する必要性を強調しました。

 共鳴し合う世界と日本のたたかい

 世界と日本のたたかいが共鳴し合う場面が数多くみられました。

 農民連の代表団は、安倍政権による日欧EPA(経済連携協定)推進などTPP型の自由貿易協定を世界に広げようとする企て、家族農業を支えてきた農地、農協、種子を守る法制度を解体しようとする政策について厳しく批判。平和憲法改悪の策動についても告発し、「家族農業を破壊し、平和を脅かす勢力とのたたかいを強化していく」(小倉毅副会長)と訴えると、会場から大きな拍手が起こりました。

 農民連はまた、福島原発事故後、労働者に健康保護規定すら適用されず、放射線レベルの高い地域で農作業を余儀なくされる農民への人権侵害を直ちにやめるよう求める決議を提案。総会はこれを採択しました。

 総会に参加した農民連の代表団は、小倉毅副会長(千葉県成田市、米農家)を団長に、佐々木賀代子・女性部副部長(福島県福島市、果樹農家)、平間徹也・青年部部長(宮城県蔵王町、ハーブ農家)、岡崎衆史・国際部副部長です。

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農民連の代表。左から小倉、平間、佐々木、(1人おいて)岡崎の各氏

(新聞「農民」2017.8.14付)
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