新聞「農民」
「農民」記事データベース20171030-1285-04

足音迫る日米FTA

農業は日本が第一の標的


日米FTA絶対阻止の運動と
世論を大きく発展させるとき

 11月5〜7日のトランプ大統領来日を前に、日本のマスコミは「足音迫る日米FTA、トランプ大統領来日へ」(時事)「米、FTA交渉意欲 農業照準」(日経)と大見出しで報道、事態は緊迫しています。

 日米FTAに 強い関心(ペン ス副大統領)

 10月16日に行われた麻生副総理とペンス副大統領の第2回日米経済対話で、ペンス氏は「日米FTAと対日貿易赤字の解消に強い関心を持っている」と表明、初めて公式に日米FTA交渉の開始を要求しました。

 もともと経済対話は「首脳会談でFTAの話を持ち出させないための仕組み」として、2月の日米首脳会談で安倍首相が提案したもの。「今回は要求をかわせる」と楽観して交渉に臨んだ麻生副総理に対し、アメリカ側は副大統領のほか通商代表や商務長官などが勢ぞろいして臨み、貿易赤字や為替問題などを次々に取り上げ、圧力をかけたといいます。

 日米FTAを明確に否定しなかった麻生副総理

 これに対し麻生氏は、アメリカに「TPP復帰」を求めるとともに、日本企業の投資がアメリカの利益になっていると言い訳に終始したものの、日米FTAを明確に否定しませんでした。それどころか、対話後に公表された合意文書には、「近い時期に2国間の貿易事項に関する進展を達成するための作業を強化する」という表現がもりこまれました。

 これは、トランプ政権からすれば「近い時期に日米FTA交渉を開始する」というに等しいものです。また、日米FTA妥結以前に、輸入牛肉のセーフガード問題や“売れないアメリカ車”の対日輸出促進などの「貿易事項」を、日本側の一方的な譲歩によって決着させることを意味します。

 「アメリカ第1主義」原理で

 アメリカの新聞「ポリティコ」(10月16日)によれば、8月に米国産豚肉の日本への輸出が9%減少し、農村部でのトランプ氏の支持率は55%から47%に低下するなど、農村部でトランプ貿易政策への支持が急落しています。

 下院(日本でいえば衆議院)全議員、上院(参議院)議員の3分の1が改選される来年11月の中間選挙を控え、成果をあげることを急ぐトランプ政権にとって、日本の農産物や自動車、医薬品などの市場開放を「アメリカ第1主義」原理で強硬に迫ることは至上課題です。

 トランプ政権の閣僚は「農業分野は日本が第一の標的」「2国間交渉では、TPP交渉を上回る合意を目指す」と公言しています。「河北新報」社説が「対日貿易赤字の削減に向け、かねてやり玉に挙げてきた牛・豚肉とともにコメの市場開放を迫ってくるのは必至だ」と指摘しているように、ねらわれているのは、牛肉や豚肉、乳製品ばかりでなく、TPP交渉で「アメリカ第1主義」原理を貫けなかった米の完全自由化です。

 日米FTAもTPP11も日欧EPAも全部ダメ

 不動産業者出身のトランプ氏にとって、政策は不動産取引と同程度の「ディール」(取引・駆け引き)。北朝鮮情勢緊迫化の一方の当事者であるトランプ大統領のアジア歴訪で、日本の国家安全保障会議への出席や韓国国会での対北朝鮮指針を示す演説が予定されています。

 「安保と通商をてんびんにかけるトランプ政権」に対し、「政府内には安全保障の『見返りに通商政策では米国に譲歩せざるを得ない』との見方もある」(時事)という議論は、トランプ氏の術中にはまるものです。

 トランプ政権の軍事攻撃を含む「あらゆる選択肢」を無条件に支持し、世界で一番トランプべったりの安倍政権。

 この最悪の組み合わせによる平和と農業の蹂躙(じゅうりん)を許さない――。日米FTAもTPP11も日欧EPA(経済連携協定)も全部ダメという運動と世論を大きく発展させるときです。

(新聞「農民」2017.10.30付)
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