(株)FOOD VOICE
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ハード系チーズを前に |
相互理解で牛乳の価値をつなぐ
それから、牛乳の価値をいかに生活者の方々につないでいくかという、もっと積極的な取り組みも必要だと感じています。今までは生乳を出荷した段階で酪農家の手を離れていましたが、その先にどういうお客さんがいて、どういうものを求めてお金を払っているのか、そういう川下のことまで生産者自身も模索をし、理解をしていかないと、牛乳の価値が本当の意味で生活者まで届かないのではないでしょうか。そういう相互のコミュニケーションがなければ、農家や業界紙がTPPや日欧EPAでの農業の危機をいくら叫んでも、なかなか伝わらないと思います。農業の大切さを、私たちチーズ屋のような、農家とはまた違う立場の者が伝えていくことも大切なのだと思っています。
短視眼的な損得でなく
「待つ文化」取り戻したい
「自分さえよければいい」とか、「自分に直接戻ってこない税金は損だ」というような短視眼的な損得は、新自由主義のなかでは象徴的な考え方ですが、稲を育てるには1年かかり、米をつかって酒を作ればさらに1年かかります。みそやしょうゆも同じですが、そういう「待つ文化」を取り戻していきたい。それが助け合いや、農協などを中心とした相互扶助のなかで生きていく大切さにもつながる話しだと考えています。
日欧EPAは日本酪農崩壊の危機
日欧EPAで「輸入チーズが安く買える」と歓迎する報道がありますが、チーズが価格だけで輸入と比較されることになれば、日本の酪農は崩壊し、チーズもなくなってしまうと強い危機感を持っています。私はチーズを買うというのは、それを作っている人や産地、流通などのフードシステム全体に対する「投票行動」だと考えます。消費には「自由」だけではなくて、そこまで考えて選択をする「義務」も負っていると思います。安いからと何も考えずに買うような投票行動は、未来の社会に対する責任を放棄しているのではないでしょうか。
ソフトクリームも大好評 |
関税や農業予算についても、日本全国の美しい農村景観も、そこに人が住んで、営みがなかったら、その美しさはないですよね。でもいま、この農村景観には対価は支払われていません。しかしこうした営みへの税の再配分はどこの国にもあり、ヨーロッパでは直接支払いが農家所得の8割を占めていますが、国民の意識として「それが当たり前」と受け入れられています。
新自由主義的な「自分に戻ってこない税金は損」という考えではなく、「どういう社会がいいのか」という、もう少し広く社会を見渡す視点にたって、税金や関税での調整が必要だと言う考えがあるべきだと思います。
「チーズのこえ」
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