新聞「農民」
「農民」記事データベース20171211-1291-05

規制改革会議 市場法廃止打ち出す

許されない!!
卸売市場の公的機能の骨抜き


ネライは大手流通資本のための
市場に変えること

 11月24日、規制改革推進会議は、「卸売市場を含めた流通構造の改革を推進するための提言」を発表しました。

 提言は、昨年11月に決めた農業競争力強化支援プログラムの決定に従って、「流通全体を視野に入れた統一的な制度を構築し、卸売市場をその中に位置づけ」、「各種規制は原則として廃止することとし、国が一律に関与する規制は、…公正・透明な取引を確保するための必要最低限のものにとどめるべきである」と述べています。これは、卸売市場法廃止に通じるものです。

 大手スーパーの配送センターも卸売市場に

 提言は、「中央卸売市場の開設者を都道府県と人口20万人以上の市」に限定している現在の規制を廃止し、「市場を開設する意欲と能力があり、国または都道府県の『認定』」を受ければ、開設を可能にするとしました。

 その認定要件は、公正な取引を行うための、セリ売り、入札、相対取引など「売買取引方法」の公表と、「差別的取り扱いの禁止」の尊守です。

 これでは、大手スーパーの配送センターを卸売市場として申請することも可能になります。

 さらに、「受託拒否の禁止」の規制については「生産者が、流通手段を吟味せず安易に市場に出荷することを助長しかねず……鮮度や大きさ等の面で著しく劣り環境影響や倫理等の点で不適切な生産・出荷がなされ一律に受託することが生産者の不適切な活動を助長しないとも限らない」などと言いがかりを付けています。

 さらに、「農協、全農等が、直接販売を基本とする販売体制の強化に向けた改革を進めていることを踏まえるならば、『受託拒否の禁止規制』を一律に適用すべきではない」としています。

 これでは、開設の認定要件である「差別的取り扱いの禁止」は、なんの規制にもならず、卸売市場法の事実上の廃止といえます。

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農・水産物の流通に大きな役割を果たしている築地市場

 流通業者からの相次ぐ批判

 こうした市場法をめぐる動きと、農業競争力強化支援法13条の「農産物の直接販売の促進」については、流通関係者から批判が相次いでいます。

 東京都の大田市場が今年1月、実需者や出荷者に行ったヒアリングで(1)「量と質の調整機能が最も大事な市場の機能であるが、直接販売ではその機能が果たせない」、(2)「直販を含め、青果の取引全般において市場を建値にしており、それがなくなると価格支配力が大きい量販店の影響が大きくなるのではないか」、(3)「市場が無くなると価格のつけ方が難しくなるが、量販店は価格支配力が強いので、農家には不利になる可能性がある」、(4)「直販の可能性と限界をわきまえてそのバランスをとっている」――などの意見が「東京都中央卸売市場大田市場青果部経営戦略」に掲載されています。

 市場には価格決定機能への信頼がある

 こうした意見のように、市場を経由せず直接販売を行っている多くの業者も、市場価格を参考にし、市場を需給調整に活用しています。

 それは、「受託拒否の禁止」と「差別的取り扱いの禁止」によって行われる卸売市場法に基づく価格決定への信頼があるからです。

 南北に長く四季のある日本は、多様な生鮮品が生産されます。それらは、天候に左右され市場への入荷量は日々変動します。

 これを調整し「値決め」を行っているのが、出荷者側の立場に立つ「卸」と、小売店や消費者の立場に立つ「仲卸」が、それぞれの情報をもとに「目利き」の技量を競い、公開で価格を決める制度です。

 だからこそ、大口の実需者だけでなく、どんな少量の出荷でも差別なく受け入れ、多様な生鮮品を少しずつ買える卸売市場は、家族農・漁業経営と街の小さな商店をも結ぶ大事な役割を果たしています。

 世界で企業が一番働きやすい国に

 消費不況が続く現在、原価を無視した異常な安売りが広がっています。

 総合スーパーが、1袋1円のもやし、1本1円の大根、1個1円のキャベツなどでお客を呼び、総合的に利益を確保しますが、街の小規模商店はお客さんを奪われて廃業に追い込まれ、買い物難民と呼ばれる事態まで現れています。

 大手企業の横暴を規制する独占禁止法は、こうした不当廉売を取り締まることができますが、せいぜい「行政指導」を行う程度で、本来の機能を果たしていません。

 その上、卸売市場法の公的機能を骨抜きにして、大手流通資本により使いやすい市場に作り変えさせるわけにはいきません。

 政府は、市場法の通常国会での法案成立を予定しています。

 農協攻撃も市場法の改悪も、戸別所得補償の廃止も根っこは一つ、「世界で企業が一番働きやすい国」をつくるためです。

 大いに地域での運動を広め、国会議員に働きかける運動を広げましょう。

(農民連常任委員 齋藤敏之)

(新聞「農民」2017.12.11付)
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