新聞「農民」
「農民」記事データベース20180101-1293-05

日欧EPA

TPP上回る
農産物市場開放で合意

国民生活全般に多大な影響
欧州アグリビジネスは喝さい


 日本と欧州連合(EU)が12月8日、経済連携協定(EPA)交渉の妥結を発表しました。日本とEUは、対立していた投資紛争解決制度を協定から分離し、合意成立を優先。2019年春までの発効を目指すとしています。日本の農林水産物の市場開放では、最悪だったTPPの水準を上回る内容が含まれます。農業への深刻な打撃とともに、国民生活全般に多大な影響が懸念されます。

 チーズ、パスタ EUに次々譲歩

 TPPをさらに改悪する内容になったのは、農林水産物、公共調達などの分野です。

 農産物では米以外の重要品目(麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)でも、加工品でも、TPPと同じかそれを上回る譲歩をしました。

 チーズについて、TPPでは関税を維持したカマンベールなどのソフトチーズで、EUからの現在の輸入量に匹敵する2万トンの低関税輸入枠を創設。輸入枠は16年目に3・1万トンまで拡大し、枠内関税も撤廃します。

 加工食品の関税も軒並み撤廃。欧州が得意とするパスタとチョコレートは11年目、ワインは発効直後に関税が撤廃されます。TPPでは関税維持か、より長期間で関税を撤廃する品目でした。

 TPPでセーフガードを設け、最長16年目の関税撤廃を決めた林産物は、半分の8年目で関税全廃とし、セーフガードも設けませんでした。

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12月11日には抗議行動が行われました

 中核市、鉄道の公共調達も開放

 影響は、農林水産分野にとどまりません。

 食品の安全を確保する規制を取り除くための「委員会」を設置。公共調達は、TPPで開放を約束した47都道府県と20政令指定都市に加え、48中核市(人口20万人以上)も開放。公共調達を利用した地域経済活性化が阻まれることになります。

 安全を脅かすことから外国企業の参入を認めてこなかった鉄道に関わる調達もEU企業に明け渡します。

 現行50年間の著作権の70年間への延長、新薬のデータ保護の確保など、知的財産権の強化も盛り込まれています。薬価の高止まりが懸念されます。

 最も重要な合意 欧州委員が絶賛

 日欧EPAの合意を受け、欧州のアグリビジネスは一斉に歓迎しました。

 フード・ドリンク・ヨーロッパは、「欧州の食品と飲料の日本市場へのアクセス条件を大幅に改善する」と表明。欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)は、「輸入関税の包括的撤廃と衛生植物検疫など貿易の非関税障壁の削減が盛り込まれ、野心的だ」と評価しました。

 EUの執行機関の欧州委員会で農業を担当するホーガン欧州委員は、「農産物・食品貿易で、EUが締結した最も重要で広範な合意だ」と絶賛しました。

(新聞「農民」2018.1.1付)
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