新聞「農民」
「農民」記事データベース20180101-1293-06

伝統ある在来の良い種子守って
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 主要農作物種子法(種子法)が今年の4月1日に廃止されるもとで、在来の種子を守る取り組みが重要になっています。代々引き継がれてきた長野県の白毛餅と埼玉県の深谷ねぎの事例を紹介するとともに、都道府県の農業試験場が品種改良、種子生産に果たしてきた役割について聞きました。


昔ながらの味は絶品・白毛餅

長野県農民連会長
竹上 一彦さん

 新しい農民運動が始まったとき、元農民連代表常任委員の小林節夫さんが、農民連の行動綱領のなかに、「ものをつくってこそ農民」と「地域の特産物を発見していこう」というスローガンを盛り込むことを提起し、私はたいへん感動しました。

 “地域に特産物あるか”と議論

 農民連の結成大会後、上伊那農民組合では役員会を開くたびに、「地域の特産物は何があるか」について何度も熱い議論をしました。

 そのなかで、飯島光豊組合長から、「白毛餅という昔から伊那谷にあるおいしい餅がある。草丈が長くてすぐに倒れて、収量も少ない弱点もある。しかし、昔ながらの味は絶品だ」という話がありました。

 山深く、谷険しい信州伊那谷に、いつのころからか「白毛もち米」と呼ばれるもち米がひっそり栽培されていました。農家はこれでお餅を作り、そのおいしい味を千年余絶やすことなく、種子をその家の宝として代々守ってきました。

味を守るには種子を大切に
“家宝”として代々守ってきた農家

 農家から一握り種子いただいて

 農民組合として、特産物として栽培しようということになり、種子を代々つくっている農家から一握りの種子をいただいて栽培を始めました。

 最初は小さな面積から始めて、5年後の1998年には3ヘクタールまで増やしました。この頃、昔ながらの形質を保つために元の種子用として、500グラムずつ紙袋に入れて、家庭用冷蔵庫で50年分を保管しました。

 現在は18戸の農家で6・5ヘクタール、550俵を生産しています。6・5ヘクタール分の種子260キログラムをつくるために、保管しておいた500グラムの元の種もみから1年目に8キログラムの種もみをとり、その種子を次の年に10アールの田んぼ2枚に植えて約500キログラムの種もみをとり、みんなに分けています。

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白く長い毛の生えた稲穂

 日本では、稲の種子をつくるのに、農水省、都道府県の試験場をへて、農家に配布されるまで長い年月がかかります。農家がコシヒカリの種子を1キログラム500円と非常に安い価格で買うことができるのは、公的機関で農業予算を使って種子の開発を行っているからです。

 地方には、昔ながらの安全でおいしい作物はまだいっぱいあります。私たちの長野県でも、伊那の羽広カブ、木曽地方の赤カブ、下條村の辛味大根、ねずみ大根など、いっぱいあります。

 そうした種子を全国各地で農民連の組織で集めて保存することを大いに訴えたいと思います。

(新聞「農民」2018.1.1付)
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