新聞「農民」
「農民」記事データベース20180101-1293-07

伝統ある在来の良い種子守って
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柔らかく甘みある農研ネギ

“自家栽種で良い種子残そう”
埼玉産直センター取り組む

 深谷ネギには「西田ネギ」や「宏太郎ネギ」という固定種があります。これらの品種の元となった「農研ネギ」の種を、埼玉産直センターのネギ部会有志が自家採種で残そうと取り組んでいます。産直センター理事の吉岡信一さん(59)とネギ部会長の秋池由裕さん(55)、尾熊高史さん(67)、福島政治さん(63)、海沢和弥さん(39)の5人です。

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ネギを植える吉岡さん(右)、尾熊さん(中央)、秋池さん(左)

 収量も少なく生産量が減少

 旧八基村(現在の深谷市の一部)の農協組合員が農業研究会を立ち上げ、1955年頃から開発をはじめました。当時はネギの品種はあまりなく、いいネギをつくろうと取り組んだ結果、できたのが「農研2号(農研ネギ)」です。

 柔らかく甘みが特徴のネギで、農研ネギをもとに西田ネギや宏太郎ネギが生まれました。しかし農研ネギは傷みやすく、分けつするのでB品にしかなりません。また、収量も少なく、水が入ると腐りやすいことから、生産量が減少し、今では「幻のネギ」と言われることもあります。

いいネギ選んで植え替え
交雑しないよう隔離栽培

 根強いファンがいるから生産を

 自家採種を提案したのは吉岡さんです。「今まで種を扱ってきた会社の社長が5年前くらいに亡くなってしまい、自分たちでやるしかないと思った」と話します。

 「農研ネギには根強いファンがいるので、できるだけ生産を続けたい」と話すのは秋池さん。今は5人で1・3ヘクタールほど栽培しています。生協の共同購入への出荷がほとんどです。

 海沢和弥さん(39)はハウストマトの生産者ですが、15年2月の大雪の後、吉岡さんの勧めで農研ネギに取り組みました。「種とりはおもしろいです。今年も台風で被害を受けた中で、品質のいいものを選んでいるので、少しずつ良い品種に変わっていくのかなと感じています」

 12月1日には、5人が畑から選抜したネギ50本をそれぞれ持ち寄り、3年目の種取りに向けてハウスへの植え替えを行いました。

 穴の中に次々とネギを植えていきます。「今年は忙しくてそれぞれが選んできたが、例年は5人全員で畑を回って選んでいます」と吉岡さん。畑の中で形状がよく一番元気のいいネギを選んできたといいます。

 次第に俺たちの農研ネギになる

 他の品種と交雑しないようにハウスに隔離したネギは、3月にミツバチを入れて受粉させ、5月に種取りを行います。「少しずつ良いものを残して、俺たちの農研ネギになっていくと思う」とみなさんは語ります。

 吉岡さんも海沢さんもそれぞれ子どもが後を継ぐ意思を持っています。「私が海沢さんに伝えて、海沢さんが私の息子に、私の息子が海沢さんの息子に、というように農研ネギがより良いものとなって伝わっていけばいいですね」と吉岡さんは期待しています。

(新聞「農民」2018.1.1付)