新聞「農民」
「農民」記事データベース20180101-1293-08

伝統ある在来の良い種子守って
(3/3)

関連/伝統ある在来の良い種子守って(1/3)
  /伝統ある在来の良い種子守って(2/3)
  /伝統ある在来の良い種子守って(3/3)
  /イラスト2点


農業試験場が種子法に基づき
どんな役割を果たしてきたか

栃木県農業試験場 元職員
山口正篤さん(66)

 種子法に基づいて、都道府県の農業試験場が果たしてきた役割は何か。

 奨励品種の決定

画像  1つは、県に合った種子を選定するための奨励品種決定調査です。これは予備試験から始まり、本試験、現地試験というプロセスをとります。その間に、特性調査や本質・食味等の評価を通じて、県の奨励品種を決定するのです。

 その期間は、7年から13年程かかります。たとえば、栃木県では、水稲でみると、1957年、全国でも早く、冷害に強く当時としては収量の多い品種としてコシヒカリを選定しました。最もドラマチックなのは1982年、稲の新葉がこより状に巻いて垂れる縞(しま)葉枯れ病がはやったときに、それに強い品種「星の光」を選定して収量が劇的に向上したことです。

 新品種の育成

 2つ目は、新品種の育成です。奨励品種決定調査の前に、品種の交配から選抜を繰り返します。栃木県に合った新品種「なすひかり」の育成も奨励品種決定調査があってできました。

 原種・種子生産

 3つ目は、原種・種子の生産です。品種の大本である原々種の生産から原種の生産・備蓄までを農業試験場が行います。

 その間にDNAの確認や特性調査、雑穂(異株)抜きなど同じ特性が維持されるようにチェックします。その後、現場での種子の採種、備蓄を行い、種子が農家のもとへ配布されます。

画像
原種審査のための異株除去作業(山口さん提供)

 種子品質の維持

 4つめは種子品質の維持です。異品種、異系統が混入しないように細心の注意を払います。水稲は、10アールあたり約10万本植えます。そのなかで、雑穂が生えるのを0・01%(10本)以下に抑えることが求められます。

 さらに種子をつくる過程で、発芽率が下がるトラブルが発生することがまれに起こります。そうならないように、発芽能力、品質特性の維持に注意を払います。このように種子の生産には、たいへんな手間がかかります。

 安い種子の供給

 最後に5つめとして、安い種子を農家に提供してきました。これまでみてきた種子の開発・生産には、国や県が補助を出すなどして、種子価格は安く農家に提供しています。栃木県ではコシヒカリの種子が1キロあたり600円台で買えますが、民間育成品種では、5〜10倍に跳ね上がることが懸念されます。

種子法廃止が日本農業に
大打撃を与えるのは必至

 種子法の廃止で日本農業に打撃

 種子法の廃止によって、国は稲、麦、大豆の種子供給に責任をもたなくなり、公的機関による品種改良や種子生産の力が弱くなり、種子の品質低下、種子価格の上昇が起こることが心配されます。

 さらに国内企業だけでなく、遺伝子組み換え種子を生産している海外大資本の進出が懸念され、日本農業に打撃を与えるのは必至です。


画像   画像
大阪・松原市 関戸しげみ
 
茨城・石岡市 末永明美

(新聞「農民」2018.1.1付)
HOT情報
写真