新聞「農民」
「農民」記事データベース20180212-1298-06

学校給食牛乳から異臭

明治乳業争議団農民連本部
酪農家(茨城・常総市)を調査


明治乳業―飼育環境で“風味”変わった
ありえない責任転嫁だ―酪農家本田さん

 昨年9月25日、学校給食のビン入り牛乳を飲んだ板橋区、新宿区など東京の4つの区と埼玉県2市の児童・教師、約1900人が、「ガソリンっぽい臭い」「カルキ臭い」といった異臭を訴える事件が起きました。これらの牛乳はすべて明治乳業戸田工場(埼玉県戸田市)で9月22日に製造されたものです。

 ところが明治乳業は調査報告書のなかで、「保健所の検査(9月26日に実施)でも問題は認められなかった」として、「製造工程上の問題はなかった」と説明。「生乳は気温、湿度、乳牛のエサなどの飼育環境により風味が変化」、「風味に敏感な生徒様が通常品とはことなる風味に感じ取られた」などと“異臭”を“風味”と言い換え、原因はあたかも酪農家や子どもにあるかのような説明をしています。

 しかも今後の対策として、「生産者団体を通じて原料乳供給元(=酪農家のこと)における生乳の風味に対する管理強化を要請」するとまで述べています。

 この説明に、「牛乳製造の現場で40年間働いてきて、そんな話は一度も聞いたことがない」と、強い疑問の声をあげたのが、明治乳業から賃金・昇給の差別を受け、その撤回を求めてたたかっている「明治乳業争議団」の皆さんです。

 “原料乳が原因”では説明つかぬ

 「どんな牛の飼い方をすれば、ガソリンや塩素の臭いのする牛乳になるというのか」と、1月24日、同争議団と農民連の笹渡義夫会長が、茨城県常総市の酪農家で農民連会員の本田豊さんの牧場に現地調査に訪れました。本田さんは、明治乳業戸田工場にも出荷している茨城県酪連の「県西ミルクステーション」に生乳を出荷しています。

 本田さんは、「たしかに飼料の種類や季節などで牛乳の風味が変わることはある」と回答。しかし「同ミルクステーションには5000トンもの生乳が入るミルクタンクが2本もあり、集乳の際には必ず酪農家1戸ずつでサンプルが取られて、風味をはじめ生菌数、体細胞数、抗生物質の有無などの厳格な検査が行われ、問題のない生乳だけがステーションのタンクに入れられる」と説明し、「原乳が問題だというのなら、ミルクタンクの全生乳の消費者から苦情があるべきなのに、1900人だけが異臭を訴えるなどということは、ありえない」と述べました。

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懇談する一行と本田豊さん(右から2人目)と誠さん(その左隣)

 明乳は真の原因究明を行うべき

 同争議団の小関守団長も、「製造ラインではパイプ洗浄などに塩素を使用しており、工場での製造工程上のトラブルなのは明白ではないか。学校給食は子どもたちの命にもかかわることであり、明治乳業は酪農家に責任転嫁することなく、真の原因究明を行うべきだ」と、応じました。

 本田さんの後継者の誠さんは、「酪農家は毎日、それは厳しい乳質検査をされ、結果が悪いと罰金を取られながら、高品質の牛乳を搾ろうと悪戦苦闘している。それなのに到底ありえないこじつけで酪農家のせいにされるとは、腹立たしい」とコメント。

 また、明治乳業は調査報告書で「原料乳供給元(=酪農家)の管理強化」を掲げる一方で、実際には「酪農協の理事をしている仲間の酪農家にも確かめたが、酪農家には今回の異臭騒ぎそのものすらまったく知らされていない」(豊さん)ということも今回の調査で判明。明治乳業の矛盾した姿勢がますます問われる事態となっています。

(新聞「農民」2018.2.12付)
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