新聞「農民」
「農民」記事データベース20180226-1300-10

ふるさと
よもやま話

愛媛農民連会長
森井俊弘


未利用木材の活用で
バイオマス発電所

 四国・愛媛県でも厳寒の日々が続き、私どもが木材搬出している風力発電建設用地のある西予市宇和では、氷点下12度と観測史上最低気温を記録しました。

 この1年、農家は天候に振り回されました。税金相談会でも、露地栽培のきゅうり農家は、「夏の長雨で例年の半作で配偶者の専従者控除もまともにとれない」と言い、ミカン農家は、「2度にわたる台風の襲来で傷果が発生し、正品率が大幅に下がった」と吐露しています。

 エネルギー資源

 山間部では、この冬の降雪で、手入れの行き届いていない山では着雪による倒木や折れた木、しなった(湾曲した)木が至るところで発生し、停電や交通遮断を引き起こしました。これらの木は、従来は経済的な価値はなく、放置され、切り捨てられてきました。

 愛媛農民連では、福島原発事故(東日本大震災)前から、対県交渉のなかでも、未利用木材の活用について、バイオマス発電の設置を要求してきました。

 1月から、「えひめ森林発電・松山バイオマス発電所」が営業運転を開始。県内外から未利用木材等12万トンを集積・活用し、12・5メガワットの発電量を見込んでいます。伐採木の約3割にあたる、根元部や曲がり材、傷材、枝などそのまま林内に放置されていたものがエネルギー資源として生かされます。

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木質バイオマス発電に有効利用される未利用木材

 供給地に発電所

 自然再生エネルギーのなかでも、時間帯や天候に左右される太陽光発電や風力発電と異なり、木質バイオマス発電は安定してできるメリットがある一方で、原料の安定供給や運送経費、貯蔵場所の確保などの課題があります。この解決策は、原料の供給力に見合った規模の発電所を供給地に建設することでほぼ解消します。

 私の町では、町内の業者と神戸のエネルギー会社が町、森林組合と協力して、森林組合木材市場の隣接地に、今年6月、小規模木質バイオマス発電所を設置し、操業を始めます。このことで、未利用木材を年間約5700トン消費し、一般家庭で約2500世帯(町の世帯数の3分の1)の電気消費量にあたる年間約811万キロワットアワーを発電します。

 林内に放棄されていた未利用材や市場価格3200〜4500円だった低質材が1トンあたり7000円で買い取られ、木材の最低価格が維持されます。山林所有者にわずかですが、利益を還元でき、林業に携わる者として期待しています。しかも、エネルギーの地産地消を進めて、エネルギー自給率向上に貢献するまちづくりを進めることができます。

 原発は不要

 四国電力は昨年4月23日、一時的に太陽光発電が四国エリアの需要量の66%を記録し、原発稼働を前提に、水力を含めると火力発電を抑えても余剰電力がでるとし、2018年春から太陽光発電の出力制御を行おうとしています。われわれは原発が不要になる瀬戸際まで追いつめています。

(新聞「農民」2018.2.26付)
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