新聞「農民」
「農民」記事データベース20180409-1306-06

仙台高裁に控訴へ

漁師の声に背向け
盛岡地裁不当判決

〔小型船による刺し網サケ漁許可請求〕


 岩手県の小型漁船漁業者が刺し網によるサケ漁の許可を求めて県を相手に起こした「浜の一揆訴訟(さけ刺し網漁不許可取消・許可義務付請求訴訟)」で、盛岡地方裁判所は3月23日、原告の請求を棄却する判決を下しました。原告の漁師たちからは「不当判決だ」「県も裁判所も、漁師に魚をとらせないというのか」と怒りの声が上がっています。

 岩手県沿岸の小型漁船漁業者は、タラやカニ、底魚など、季節ごとに様々な魚をとって生計をたてています。漁獲が減る秋、頼りになるのはサケです。ところが、岩手県内では漁業調整規則により、固定式刺し網によるサケ漁が認められていません。沿岸の環境と漁村を守ってきた漁師にとって、暮らしと経営を守り、次世代につなげるために、そして東日本大震災津波からの復興のために、サケ刺し網漁は切実な課題です。

 県の主張に根拠なし

 原告の漁民100人は、年間1人当たり10トンを上限としてサケの固定式刺し網漁を認めるよう求めていました。裁判では2年4カ月にわたり、漁師や第一線の研究者がサケ刺し網漁を認めることの合理性を証言してきました。

 県は当初、漁民たちが県に求めていた許可申請の手続きについて問題があるとし、この点に集中して反論していました。しかし判決は、こういった手続きの問題ではなく「資源保護」「漁業調整」という内容に踏み込んだうえで、県の不許可処分に合理性があるとして、原告の訴えを退けました。しかし、なぜ県の主張に合理性があるのか、明確な根拠が判決では示されていません。

 一方で、「サケ」「刺し網」「10トンに限定」という許可申請のありかたについては適法なものとしたのも、判決の特徴です。澤藤統一郎弁護士は「訴訟の形式面では、原告側の言い分を全面的に認めている。したがって、行政訴訟の土俵には乗った。たたかいはこれからだ」と語ります。

 達増拓也知事は判決を受け、「県の不許可処分の妥当性が、認められたものと考えている」とコメントを発表しました。

 報告集会では怒り・決意次々

 判決後の報告集会で、原告団長の藏桾スさん(岩手県漁民組合組合長)は、「言葉にならない。受け入れがたい判決だ」と発言。会場からは、ベテランから若手まで沿岸各地の漁師が「隣の宮城では当たり前に漁師がサケをとっている」「サケをとれれば後継者も育つ」「おれたちは漁師だ。魚をとらなければ生きていけない。高裁で徹底的にたたかおう」と決意の言葉が相次ぎました。

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判決後開かれた報告集会(盛岡市)

 原告団は4月中に仙台高等裁判所に控訴するため、準備にとりかかりました。浜の一揆はまだまだ続きます。

(岩手県農民連 岡田現三)

(新聞「農民」2018.4.9付)
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