新聞「農民」
「農民」記事データベース20180409-1306-11

ふるさと
よもやま話

群馬農民連会長
吉野浩造


家族農業への支援は
私たちの当たり前の要求

 私の住む群馬県北部の利根沼田地区は、5市町村で人口約9万人を抱え、日本でも典型的な河岸段丘の一つで、実に風光明美なところです。

 作物にとっても環境はいいが…

 先のNHK大河ドラマ「真田丸」で紹介された真田一族の居城地でもあり、その昔は、江戸と越後を結ぶ交通の要衝でもありました。

 気候は夏は昼夜の温度差で比較的過ごしやすく、作物にとっても非常に条件のよい環境です。

 冬は谷川連峰を越えてくる新潟方面からの冷たい風が身にしみて、東北地方並みに寒く、山沿いはどっさり雪も降ります。そのため、農閑期は、周辺に点在するスキー場の農外収入で生計をたてている農家も少なくありません。

 農作物は多種類が栽培されていますが、中山間地で水田も少ないことなどから、兼業農家が大半を占め、専業農家も夏野菜やコンニャク栽培が主です。

 こうした特徴は、数十年来変わりはありませんが、近年、道路の延長やトンネルの開通により、交通事情が一段とよくなり、首都圏との距離も大幅に短縮されるなど、ここ数年の就農や生産意欲の向上にまで変化がみられています。

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「春近し。もや立ち上る雨後のほ場」(沼田市)

 担い手の高齢化 後継者の不足

 一方、このようにインフラ整備やブランド化も進むなかでも、やはり担い手の高齢化や後継者不足は深刻な課題です。これはさまざまな要因が考えられますが、今後さらに低関税の自由化に拍車がかかれば、それは加速度的に進み、体力のない経営から消滅していくことは明白です。

 その流れは、長年放置された政府のゆがんだ体質に起因し、耕作放棄地の拡大や担い手の平均年齢の上昇をみれば明らかです。

 家族農業が主で、生産力を維持している利根沼田地区でも、当然、家族農業を支援することこそが必要なのに、政府はその役目を果たしていません。結局、国策の欠陥を地方自治体の財政で不十分ながらも補っているにすぎません。

 農作業する中で願うことは一つ

 今日も夕方、ある会員が「戸別所得補償制度の復活を求める」署名用紙と、新聞「農民」の宣伝紙を片手に、集落を回っていたという知らせが届きました。また、身内の祝い事で飲みすぎて、慌てて帰り、夜遅くまで朝市の準備に追われる会員もいました。

 みんな、毎日の仕事の中で、願い思う気持ちは一つ。決して私たちは、無理難題をお願いしているわけではなく、生業としての当たり前のことを要求しているだけです。

 谷川の雪解け水を待たずに夏野菜の準備でまた忙しくなる4月。幸い利根沼田農民連は、女性部が活発に活動しています。

 ここから元気をもらい、「これからも、体にきゅうついて、がんばるべえやー」です。

(新聞「農民」2018.4.9付)
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