新聞「農民」
「農民」記事データベース20180423-1308-01

TPP11
TPP12以上に危険

日本農業に深刻な打撃

 TPP11をめぐる情勢が緊迫しています。3月8日のチリでの署名を受け、安倍政権は3月27日、承認案と関連法案を閣議決定。今国会で批准ゴリ押しを狙っています。政府は、農業への影響は軽微だと言い張りますが、その中には、TPP12以上に危険な内容が含まれます。農業への深刻な打撃は避けられません。


カナダ・オーストラリア・ニュージーランド
農産物の対日輸出拡大もくろむ

 日本向け輸出著しく増加

 「カナダ農業にとって重要な協定」―。カナダの農業紙「ウェスタン・プロデューサー」が1月末、TPP11でカナダ産農産物の対日輸出が大幅に拡大することを特集しました。輸出が拡大するのは、豚肉、牛肉、小麦など。

 特に、対日輸出が第2位の豚肉は、年3億カナダドル(約246億円)増えるとの業界試算を紹介。これは、日本政府が試算する豚肉生産減少額(最大248億円)すべてに匹敵します。

 カナダ政府も、農産物を中心に「対日輸出が最も著しく増加する」とみています。

 対日牛肉輸出が第1位のオーストラリアのチオボー貿易・投資相も、アメリカに対して大いに優位になり、「牛肉輸出が増える」と歓迎。主要乳製品輸出国のニュージーランドも、日本への乳製品の輸出が約2倍(85〜119%増)になると試算しました。

 最悪の協定そのままに

 TPP12は日本の農林水産物の関税撤廃率をそれまでの経済連携協定(EPA)の平均の50%台から82%まで引き上げました。残った18%についても、7年後には日本が輸入を拡大する方向で農産物輸出国と協議する約束までさせられるなど、「史上最悪の農業つぶし協定」でした。

 TPP11には、TPP12で日本が行った関税削減、撤廃の約束がそのまま盛り込まれています。これを好機とし、農産物輸出国が、抜けたアメリカの分も輸出を増やそうともくろんでいるのです。

 TPP12で設けられた加盟国全体を対象にしたバターや脱脂粉乳の低関税輸入枠(7万トン)もそのまま維持されたため、ニュージーランドやオーストラリアは、アメリカの枠を埋める形で対日輸出をさらに増やそうとしています。

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田植え真っ最中。南国市で3月26日
(高知県農民連・中越吉正さん撮影)

 セーフガード発動不可能に

 輸入急増に備えてTPPで新たに設けられたセーフガード(緊急輸入制限)は、アメリカからの輸入(2016年約21万トン)を前提に発動基準量が高く設定されたままのため、発動できなくなります。

 牛肉のセーフガード発動基準は発効時59万トン。オーストラリア(16年の対日輸出は約28万トン)が輸出を倍増させても基準に届かなくなってしまいました。

日米FTAで圧力強めるアメリカ

 アメリカの要求さらに強硬に

 忘れてはならないのは、TPP11での日本の譲歩は、アメリカの要求をいっそう強硬なものにし、日米FTA(自由貿易協定)で付け込まれるということです。

 「農業分野の市場拡大は日本が第一の標的だ」(ライトハイザー通商代表)、「牛豚肉、乳製品、果物、野菜などの高関税を引き下げる日米FTAを熱望する」(パーデュー農務長官)。アメリカからの圧力はすでに強まっています。アメリカ通商代表部は3月、FTA締結に関心があると日本政府に伝えたことも明らかにしました。

批准阻止で底なしの自由化に歯止めを

 日欧EPAでもTPP以上譲歩

 昨年末に妥結した欧州連合(EU)とのEPA(日欧EPA)にも、TPP以上の自由化が盛り込まれています。

 EUと日本の政府が2019年の発効を目指す日欧EPAでは、TPPで関税を維持したカマンベールなどのソフトチーズに、低関税輸入枠を設置。TPPでは関税「削減」だったパスタの関税をゼロにし、ワインや林産物の関税撤廃時期を前倒ししました。

 TPP11、日欧EPA、日米FTA…。「史上最悪の農業つぶし協定」をモデルにした自由化の底なし沼に歯止めをかける第一歩として、TPP11の批准阻止の運動が早急に求められます。

(新聞「農民」2018.4.23付)