日米首脳会談安倍首相は日米FTA隠すが
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記者会見するトランプ大統領と安倍首相(4月18日、首相官邸ホームページから) |
「新協議機関」は「日米FTA一歩手前」
首相側近の西村康稔官房副長官は、「貿易協議機関」について「日米FTA(自由貿易協定)の予備協議ではなく、念頭にもない」と、日米FTA隠しに躍起ですが、隠蔽と改ざんが体質化している安倍政権のやり方には数々の疑念がふくらむばかりです。第1に、「新貿易協議機関」の中心はライトハイザーUSTR代表と茂木経済再生相です。両氏は日米FTA交渉が始まれば交渉責任者になる人物であり、「日米FTA一歩手前」と言われています(FNNプレミアム)。
ライトハイザー氏は、就任にあたって「農産物は、日本が第一の標的になる」「TPP交渉を上回る合意を目指す」と公言し、今回の首脳会談でも「なぜ日本はFTAではダメなのか」と食い下がった人物です。この上なく危ない人選です。
ハガティ駐日米大使は「日本の農産物市場開放や自動車貿易が優先的に話し合われる可能性が高い」「新貿易協議が日米FTAに発展するかどうかは両氏に委ねられる」と公言しています(時事)。「新しい協議の場について、(トランプ・安倍の)二人が考えていることはまったく異なっている」(東洋大学・薬師寺克行教授)のが実態です。
日米FTAの「着手金」求めるトランプ政権
第2に、首脳会談前にアメリカ側は「2国間交渉の現在の焦点は日本だ」と述べ、トランプ大統領は18日の夕食会で「これから数週間かけて、非常に有利な貿易取引などができるようにしたい」と述べています。トランプ政権の命運を決めるといわれている11月の「中間選挙」を前に、目に見える成果を早くあげたいトランプ氏にとって、日米FTAの「着手金」「前払い金」として、アメリカ製兵器の購入や自動車と牛肉の輸入増、食品添加物・農薬の規制緩和などをゴリ押しする危険があります。
その圧力の場が新貿易協議機関であり、テコになるのは、安倍首相の懇願にもかかわらずトランプ大統領が拒絶し、同盟国で唯一、日本にだけかけられている鉄鋼・アルミ製品に対する不当な輸入規制です。
TPP11、日米FTAや改悪TPPを許さない運動を
第3に「TPPが日米両国にとって最善」と言い張る安倍政権の対応は大問題です。トランプ大統領は農業界向けにはTPP復帰をちらつかせ、中核的な支持層である「サビついた工業地帯」の労働者向けにはTPP脱退を宣伝し、さらに「アメリカにとって有利なものになるならばTPP復帰もありうる」という三枚舌を使っています。アメリカに有利なTPPとは、日本に不利なTPPです。TPP交渉で譲歩した線をスタートに、日米FTAやさらなる改悪TPP交渉で際限のない譲歩を迫られる危険が大きいといわなければなりません。
壊れた国内政治基盤の立て直しをもくろんだ日米首脳会談は、あわれで屈辱的な結果に終わりました。内政・外交ともに完全に行き詰まった安倍政権に貿易・通商問題を託するわけには絶対にいきません。安倍首相は辞めろという国民的運動と結んで、TPP11はもちろん、日米FTAや改悪TPPを許さない運動が求められています。
次週号(5月7日付)は休刊にします。 新聞「農民」編集部 |