新聞「農民」
「農民」記事データベース20180521-1311-01

種子法復活法案
野党6党で共同提案

提出の動機や今後の展望について

関連/種子法復活法案 野党6党で共同提案
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 野党6党が4月19日に共同で提出した「主要農作物種子法復活法案」について、立憲民主党副代表で同党農林水産部会長の佐々木隆博衆院議員(北海道選出)に、法案提出の動機や今後の展望について聞きました。


立憲民主党副代表(農林水産部会長)
佐々木隆博衆院議員にきく

 あまりに唐突 議論も不十分

 優良な種子の生産・普及を目的とする主要農作物種子法は、特に農業県にとってはとても重要な法律でした。それが、あまりにも唐突に、議論も不十分なまま、かなり乱暴なやり方で昨年、廃止法が可決されました。これまで培ってきた都道府県の優良種子確保の役割が後退するのではないかと、多くの農業者が不安を抱えています。

 その背景には、規制改革推進会議の意向がありました。とくに第2次安倍内閣の発足以降の規制改革は、経済界を守るために、国家戦略特区とセットで進められてきました。それは地方が望む改革ではなく、国と財界が望むものを無理やりねじ込んでくるものへと変質していきました。まさに、命とくらしと地方に切り込んできたのです。そのターゲットの一つが、岩盤といわれる農業でした。

 この流れは、2015年から始まる農協・農業委員会の解体、農地法改悪、昨年の農業関連8法、そして今回の農業関連9法案へと受け継がれてきました。

 こうして農業・農村という特性を無視した競争が押しつけられ、ムラが崩壊していく方向に突き進んでいるのです。

優良種子の知見を海外に
流出させないために

 種子法廃止には大きな問題2つ

 主要農作物種子法の廃止には2つの大きな問題がありました。

 第1の問題は、今まで都道府県とその試験研究機関が営々と築き上げてきた種苗生産に関する知見をいとも簡単に民間企業に提供してしまうことです。

 これまでは各都道府県が農業試験場と協力しながら、おいしい農産物の開発に力を入れ、各県でしのぎを削ってきました。民間任せでは、こうした知見が守られるのか疑問です。

 第2の問題は、種子を農家に届けるまでのシステム(種子を原原種ほ場から原種ほ場、種子ほ場へと運搬し、それを農家に普及する)が成り立たなくなってしまうことです。このシステムには、膨大な費用がかかり、これまでは各都道府県が行ってきました。ここに日本の業者が入り込む余地はありません。財力のある穀物メジャーや農薬企業だけが参入できることになります。

種子法廃止に全国で反発
現場に寄り添い復活めざす

 野党が共同して官邸農政に対案

 こうした不安に応えるために、そして今まで都道府県が積み上げてきた努力を大切にしたいという思いから復活法案を提出したのです。

 野党が、農業の現場に寄り添って、共同で提出した意義は大きいと思います。一昨年の参議院選挙では、東北5県、新潟、長野など農業県で野党統一候補が勝利しました。

 とくに農村では、安倍「官邸」農政との矛盾は大きくなっています。今後も野党連携を追求すべきだと思います。

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野党が共同して復活法案を提出しました

 復活法案は、5月中の審議入りをめざしています。さらに、農業者戸別所得補償法案など、野党の共同提出につなげていきたいと考えています。


種子法復活法案の概要

 (1)廃止前の主要農作物種子法に定められている内容(稲、麦、大豆を対象に、都道府県による種子生産ほ場の指定、生産物審査、原種及び原原種の生産、優良品種の指定等)をそのまま規定する。

 (2)種子生産に関する知見の国外流出を招きかねない農業競争力強化支援法第8条第4号の規定を削除する。

 (3)新たな主要農作物種子法に、国内の民間事業者の能力も活用した優良な種子の安定的な生産及び普及に配慮する旨を規定する。

(新聞「農民」2018.5.21付)
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