新聞「農民」
「農民」記事データベース20180618-1315-10

農民連食品分析センター

食の安全・安心へ機能発揮
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漢方生薬の残留農薬再検査

枯葉剤材料2・4−Dを検出

国は安全対策を業者まかせ

 2003年に農民連食品分析センターが漢方薬(生薬)から残留農薬を検出したのをきっかけに、国が研究班を設置し、改善に努める動きへとつながりましたが、15年を経て、今の状況をあらためて調べてみようと、分析センターが市販されている漢方生薬の残留農薬の独自調査に取り組みました。

 検査したのは、前回の分析で農薬が検出されたサンシュユ、ソヨウ、タイソウ、チンピに加え、キジツ、シャクヤク、オウゴン、ソウジュツの8種類。漢方薬は通常、さまざまな薬を組み合わせて煎じて(煮出して)服用しますが、その元となる生薬を検査しました。検体の入手先は東京都内の個人経営の漢方薬局です。

 さて、結果は別表のとおりでした。

 前回よりは数値は改善しているように見えますが、ミツバチの大量死(蜂群崩壊症候群)の原因ではないかと議論が高まっているネオニコチノイド農薬や、輸入果物のポストハーベストに使われるイマザリルなどの防カビ・殺菌剤、有機リン系殺虫剤で、シックハウス症候群の原因物質として知られるクロルピリホスなどが検出されました。

 なかでも問題なのは、2・4−Dと呼ばれる除草剤が検出されたことです。2・4−Dはベトナム戦争では枯葉剤の材料として使われた農薬で、人間に対する毒性としては、肝毒性や生殖毒性なども指摘されています。

 輸入に頼る漢方薬 規制基準設定されず

 原産地の表示はなく、不明ですが、日本漢方生薬製剤協会の調査によると、漢方薬の原料生薬の約8割は中国産で、国産は約1割程度しかないのが実態です。

 9割を輸入に頼る漢方薬ですが、ではその残留農薬の基準はどうなっているでしょうか。2003年の分析センターの検出後、厚労省は農水省やメーカー団体などと共同で研究班を設置し、漢方薬メーカーに調査徹底を指示するなど、一定の改善に乗り出しましたが、国による規制基準はいまだに設定されていません。

 いまだ残留農薬がなくならない実態

 しかし、国内漢方メーカーの多くが加盟する日本漢方生薬製剤協会は、2003年の分析センターでの農薬検出を受けて、国内の漢方薬メーカーの原料調達体制の調査や自主基準の設定、また検査機関による残留農薬の検査、中国の生産地での栽培調査にも取り組むようになってきました。

 しかし自主基準の設定がされていない農薬もあるなどの問題や、今回のように一部の生薬からはいまだに残留農薬がなくならない実態があり、国は漢方薬の安全対策を業界団体まかせにせず、責任を持って対処することが求められています。

(新聞「農民」2018.6.18付)
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